かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2026.02.17

公開発表会レポート 『環境人間学部生が提案する 地域企業のSDGsへのアプローチ』

(主催:兵庫県立大学環境人間学部 SDGs推進室、龍野商工会議所、西兵庫信用金庫)
2025.01.16 @環境人間学部キャンパス講義棟

 

兵庫県立大学の周辺地域(西播磨地区)を拠点とする企業6社を対象に、本学部の3つのゼミが、企業の課題解決と複数のSDGs目標ゴールにつながる新しい取り組みを提案する発表会。学生たちが半年間にわたって企業や工場への見学や現地やオンラインでのヒアリング調査などを行い、学生目線の提案をさせていただくというもので、今回で3回目を迎えます。

当日は、主催の西兵庫信用金庫 桑垣理事長の開会のご挨拶と、本学SDGs推進室の増原准教授による概要説明のあと、学生のプレゼンテーションが始まりました。

西兵庫信用金庫 桑垣喜一 理事長

兵庫県立大学環境人間学部 増原 直樹 教授

海外の実例をヒントに、長く無理なく働ける制度づくり:中嶌一憲ゼミ(社会デザイン系)

■男女の賃金差異を、社内で「見える化」

発表1:中嶌ゼミ→株式会社イボキン(本社:兵庫県たつの市)

建物・プラントなどの解体、輸送、リサイクルを行うイボキンのヒアリングの中で、子育てサポートを行う優良企業に与えられる厚生労働省による認定制度『くるみん認定』の取得を考えていると把握。中嶌ゼミの研究によって『くるみん認定』取得の決定要因の一つに、「男女の賃金差異」の縮小があると判明します。そこで、中嶌ゼミは研究結果をエビデンスとして、算出した賃金差異を社内外での公表後に賃金差異が縮小したヨーロッパの事例を挙げながら、公表義務のないイボキンにも早期からの賃金差異の公表を、と提案しました。

■女性管理職割合向上のために『管理職ペア制』導入を

発表2:中嶌ゼミ→株式会社帝国電機製作所(本社:たつの市)

各種プラントのキャンドモータポンプや車両用ポンプなどを製造する同社には、製造業では低くなりがちな女性管理職割合を上げるために『管理職ペア制』の導入を提案しました。これは、1つの管理職ポジションを2名で担当するというもの。ドイツの鉄鋼企業では、時短勤務中の女性2名がペアで管理職となっており、しかも2人は異なる分野でキャリアをもつため、新たな価値や可能性が示されると訴求。ペア制は管理職登用のハードルを低くし、女性管理職候補の拡大=組織全体の生産性や働きやすさの向上、ひいては企業価値の向上につながると提案しました。

イボキン&帝国電機両社への提案として

企業価値向上のために『キャリア減速制度』&『社内参加型CSR活動』を

また同ゼミでは、勤続年数が18年を超えると企業価値が上がる傾向があると分析(平均勤続年数イボキン:8年、帝国電機:17年)。厚生労働省による調査では「離職理由の割合」において約7割が個人的理由という結果に。そこには育児、介護、体調などのライフイベントによる「働き続けたいけど働けない」状況も含まれていました。一定期間、業務量や責任を軽減できる『キャリア減速制度』は、状況が落ち着けば再びキャリア形成ができるというもので、ライフイベント期に転職、退職以外の新たな選択肢を獲ることができます。さらに、この制度の利用者を対象にした『社内参加型CSR活動』も提案。新人の相談役、後輩の業務サポート、両立経験の共有などを行うことで、新人社員の将来的な不安、中堅社員の復職不安を同時に解消できると考察しました。

<イボキン様からのフィードバック>

当社の基本的な賃金制度は男女同じだが、管理職に男女比率の差が賃金差異に連動している。とはいえ、数合わせのような登用ではなく、男女一人ひとりの働き方を尊重する多様性を反映させたい。自分自身も子育て中だが、これから社会人になる学生が、自身のキャリアを真剣に考えていることに好意的に感じたが、一方で、リサイクル業という事業にも関心を持って欲しかったという思いもある。

株式会社イボキン(本社:兵庫県たつの市)

 

<帝国電機製作所様からのフィードバック>

印象的だったのは『管理職ペア制度』。自分も管理職なので、もう一人いたら助かるというのはよくわかる。手当の面など考えると施行のハードルは高いが、こうした面白い制度を初めて知ることができた。『キャリア減速制度』の方も、制度見直しの時に検討していきたい。

株式会社帝国電機製作所(本社:兵庫県たつの市)

今の魅力を訴求する、新たな付加価値の提案:高橋綾子ゼミ(国際文化系)

■大学生や地元高校生にアピールする機会の創出を

発表3:高橋ゼミ→株式会社オサキ(本社:宍粟市)

物流事業用木製パレットなど木材製品の製造と、古材リサイクル事業「KOZAI」ブランドを展開するオサキ。ヒアリング調査から、地域雇用への貢献度が高いことや現場での人材育成体制の充実を把握しました。この事実をアピールするために、『ひょうご産業SDGs認証事業』の取得を提案。取得会社は、合同企業説明会への優先出展、兵庫県公式YouTubeで企業紹介動画を公開できるなどの特典を受けられます。また、インターン高校を地元1校から同市内の全3校に枠を広げることも提案しました。

 

<オサキ様からのフィードバック>

実務に追われて、SDGsに積極的に取り組んでいないので、これを機に『ひょうご産業SDGs認証事業』認定をチェックしていきたい。また、山崎高校以外のインターン導入も積極的にしていきたいと思う。一番の課題は人材確保。当社の魅力訴求にどう取り組めばいいか考えあぐねていたので、今回の提案を社内で共有し、ブラッシュアップしていきたい。

株式会社オサキ(本社:兵庫県宍粟市)

■既にSDGsを推進している老舗メーカーへの提案

発表4:高橋ゼミ→株式会社ブンセン(本社:たつの市)

創業92年を数えるつくだ煮・惣菜・米飯などの食品メーカーのブンセン。ヒアリング調査の結果、嚥下性・栄養バランスに配慮した商品展開、製造工程からのごみ削減、必要な分だけ使える「スパウト容器」での提供など、すでにSDGs推進に積極的に取りくまれていることがわかりました。そこで今後も企業として持続的に成長していくために、現在展開中の、国産さつまいもを原料とした愛犬用のおやつ「ワンデーズ」への付加価値の提案と、「味変トッピング」、「噛むケア」などの用途拡張などを提案しました。リクエストのあった人材確保のための提案としては、女性活躍企業/SDGs推進企業としてPRでき、学生との交流事業にも参加できる「ひょうご・こうべ女性活躍推進企業(ミモザ企業)認定制度」の申請を提案しました。

 

<ブンセン様からのフィードバック>

当社はおいしさにこだわって92年。品質にこだわっても届かなければ意味がない。愛犬向けおやつに「噛むケア」の機能をもたせるのは考え付かなかった。ミモザ企業の認証も前向きに検討したい。学生から提案を受けたことがなかったので、いい機会になった。

ブンセン株式会社(本社:兵庫県たつの市)

独自性の高い事業に、地域防災・環境改善の付加価値をプラス:増原直樹ゼミ(社会デザイン系)

■自社製品を活用した体験型PRで、魅力発信と求職者増加を狙う

発表5:増原ゼミ→株式会社オーエスエム(本社:宍粟市)

教育機関や商業施設用AVスクリーンなどの製造、施工を行うオーエスエムには、企業就業者数の増加と宍粟市内人口の増加に寄与したいという思いがありました。そこでInstagramの活用など、PR場所の拡充を提案。学生が作成した約10秒の動画を実際に上映し、見せ方提案も行いました。また、同社製造のスクリーンを全方位に囲んだインパクトのある空間を体感してもらうことで、就活生が重視する「やりがい」の訴求も提案しました。その他、「環境負荷評価」の算出や「地域防災」に関する連携協定の締結など、社会貢献性の高い企業へ、という提案でした。

 

<オーエスエム様からのフィードバック>

若い目でのいろんなアドバイスは、「なるほど」と参考になることがある。人口流出、人材確保は宍粟市でも大きな課題。産・学・官が一体となった取り組みで、宍粟市の魅力を語り、働きたい、住みたいと思える感動を与えたい。という中で、映像でのPRというのは面白い。今回の提案を、当社に来てPRしてもらうこともできる。これは面白い経験になるはず、実際の結果を見るのも学びだと思う。

株式会社オーエスエム(本社:兵庫県宍粟市)

■小京都に「伝統建築物×エコシティ」という新たなアイデンティティを

発表6:増原ゼミ→緑葉社(本社:たつの市)

店舗誘致や賃貸、古民家リノベーションなど、小京都・たつの市を拠点とする緑葉社。課題は、集客率・認知度が低く、たつのを深く体感できる機会が創出しにくいことでした。そこで、古民家の「木材」に注目し、CO2固定量を算出、可視化を提案。また、オフサイトPPA(企業が敷地外に設置された再生可能エネルギー設備から、電力を購入する仕組み)による再エネ導入などで、「伝統建築物×エコシティ」を新たなブランドとして打ち出すことを訴求しました。また「時間の流れの中で残ってきたもの」と「今、生きている文化」をテーマにした観光ツアーの企画と、長尺動画コンテンツ制作なども提案しました。

 

 

<緑葉社様からのフィードバック>

ものづくり企業が多い中で、うちは特殊な職種。難しかったと思うが、よく仕上げていただいた。CO2のこと、オフサイトPPAの提案意図がよくわかり、具体的な取り組みを提案してもらえたのはありがたかった。プロモーションの提案は私たちがイメージしてきたことで、若年層も同じように思ってもらえていたのは心強い。たつのが日本一といわれる古い建物群の数をCO2排出量と重ねてPRできるというのは、新鮮な気づきだった。

株式会社緑葉社(本社:兵庫県たつの市)

 

現場を動かした、先輩たちの提案

発表会後半では、前年度までに環境人間学部の学生らが行った提案が、実際にそれぞれの企業でどう発展しているのか、代表の2社から報告を受けました。

 

1:KLASS株式会社(産業機械メーカー)

当時の提案内容「畳製造を自動化する=人間でしかできない仕事に注力できる」という一文を使った提案書を営業現場のPRでしている。自動化によって人間の仕事を奪うのではなく、機械の仕事と区別することで職人技が継承、存続でき、畳店のサステナビリティに貢献できることが各地の当事者に響いている。そういう環境を作るのが当社の使命だとアピールされています。人材面でも3年間で女性雇用率が劇的に上昇するなど、学生の指摘・提案から、いろんな取り組みが実現している。

KLASS株式会社(産業機械メーカー)

2:西兵庫信用金庫

「SDGs定期預金」を企画運営。利息額相当分を金庫が負担し、エリア内の公立病院6院に車椅子を贈呈、公立図書館に書籍購入費を寄付されました。同社と取引があり、発表会の歴代の参加企業は、学生からの提案からSDGsに興味を持って経営をされているように感じる。

西兵庫信用金庫

そして、兵庫県からは、 産業労働部地域経済課の藤原班長が、県内の企業のSDGsに関する現状を報告。若者に選ばれ、地域とともに歩める企業に成長してもらうための兵庫県の取り組みを紹介されました。

発表会、お疲れさまでした!

イボキン様×中嶌ゼミ

帝国電機製作所様×中嶌ゼミ

オサキ様×高橋ゼミ

ブンセン様×高橋ゼミ

オーエスエム様×増原ゼミ

緑葉社様×増原ゼミ

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