社会デザイン系の杉山武志教授(人文地理学)が「ウルトラ・アーバニゼーションの時代」を出版
人文地理学が専門の杉山武志教授が「ウルトラ・アーバニゼーションの時代―社会経済地理学の新たな挑戦」を出版されました。より善い環境を次世代につなげていくため、行き過ぎた都市化を転換するためには何をすべきなのか解き明かそうとされています。
杉山教授が自著に込めた思いを聞いてみました。
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「ウルトラ」ってタイトルを聞くと、昭和の高度経済成長時代に流行った特撮テレビドラマが思い浮かぶかもしれませんが(笑)、まさにその頃から我が国では「過剰」な都市化の現象が始まりました。メディア化やデジタル化が複合化した経済成長や都市再開発を是とする現代の都市化は惑星スケールに拡がり、物理的な景観や景色だけでなく、人間の価値観や行動にも無意識のうちに「都市化の論理」が入り込んできています。
しかし、「都市化の論理」の陰で、知らないうちに大切な近隣の人間関係や身近なコミュニティの存在が忘れ去られてしまう「現実」に晒されているかもしれないと問うと不思議に思われるでしょうか。環境人間学部で人文地理学の教育/研究を重ねている私からすれば、将来に対する「不安」がふつふつと沸き起こります。「都市化の論理」に身を委ねるのではなく、人間味のある場所性を育む身近な地理的環境のワクワク感を取り戻して次世代につなげていきたい。そんな思いを胸に綴ったのが本書です。
ところで、本書の装丁は、若手装丁家の方に描いていただきました。「若い装丁家さんなら本書を読んでどのように思われるかな?」と考えていたので、出版社に装丁をお願いするとき「若手の人に描いてもらいたい」とお願いしたのです。すると、本書のゲラ原稿をしっかり読み込まれた装丁家さんは、私の思いを上手く表現くださいました。本書の論点が、次世代を担う若い方々との対話につながると確信できた瞬間です。次世代を担う高校生や大学生の皆さんにも(本書には難解な箇所もありますが)ぜひお手に取ってもらって、現代のアーバニゼーションに立ち向かう手がかりを議論することができればいいな、と思います。



