ゼミでは学会発表や自治体インタビューを経験。人々の環境行動を促す要因について研究(増原直樹ゼミ)【兵庫県立伊川谷北高校出身】
誰にでも関係のある身近な学問「環境学」を学んでみたい。
自由度の高い高校で、勉強しやすい環境が整っていたと思います。小中と野球をしていましたが、新しいことに挑戦したくて硬式テニス部に所属。上達していく自分に成長を感じることができたし、今でもつながる友達を得ることができました。
大学進学を意識し始めたのは、2年生の冬ぐらいでした。私は双子だったこともあって学費などのことも考え、国公立大学に進みたいと思っていました。3年生の夏に担任の先生から兵庫県立大学の環境人間学部を勧められ、学部のHPをみて「環境学」は誰にでも関係がある身近な学問だと興味を持ちました。また、一つの分野だけではなく幅広い分野について学ぶことができるので、人生の選択肢も増え、自分のやりたいことが見つかるかも知れないと受験を決めました。
1年次に幅広く学び、自分の隠れた適性に気づく。
1年生では、興味のある授業を中心に受講しました。中でも、印象に残っているのは「社会統計学」と「情報処理基礎」です。高校生の時は科目としての数学は苦手でしたが、数学的なことを用いて社会を知る「統計学」はとても興味深く、毎週、受講するのが楽しみでした。「情報処理基礎」では、タイピングの速さが点数化され学年でトップ10に入るぐらいはまりました。自分がパソコン好きだということを再認識するきっかけになったと思います。
1年生の間に4つの系の先生の授業を幅広く受け、系ごとの雰囲気が分かり「これは面白い」「ちょっと違う」と自分の興味を見極めることができました。もともと公務員志望であったこともあり、まちづくりや地域に関する授業は興味深く受けることができました。
系選択、そして2年次の学びを通して「環境」への興味が本物に。
1年の後期、系の選択が迫る中で、自分に問いかけてみました。建築?教育?国際?結果、自分が一番、身近に感じ真剣に取り組めるのは「環境」に関する学びだと思いました。それに、地域や環境に関する講義が、将来、公務員になってから役立つはずだと社会デザイン系に進むことに決めました。
社会デザイン系に所属してからは、環境に関係する授業を積極的に履修していきました。その中で、増原直樹先生の「環境政策」では、過去の公害問題から最新のSDGsまで、環境問題の様々な側面について学ぶことができました。環境問題はどこか遠い世界の話なのではなく、自分たちの生活と深くかかわっていることを知り、環境学というものは、生活していく上でとても大切なものだと感じ、真剣に受講しました。この学びをさらに深めるため、3年生からは増原直樹先生のゼミに所属して、研究していくことにしました。
地球環境シンポジウムでポスター発表「コロナ禍が大学のエネルギー消費に与えた影響」
ゼミに入ってすぐに増原先生から1冊の本『都市の脱炭素化』(国立環境研究所編著)を渡されました。いろいろな環境に関する教材が入っている本で、1週間に一人1章ずつまとめて発表し、知識を深めていきます。ゼミ生とともに長い時間をかけて1冊の本を読み終えると、自ずと、自分が取り組むべき研究テーマが決まってきました。
3年生の夏、北海道で行われた学会「第30回地球環境シンポジウム」に参加し、ポスター発表をしました。ポスターテーマは「コロナ禍が大学のエネルギー消費に与えた影響―SDGsと感染症対策の相互関係を考えるー」。これはゼミのメンバーと一緒に取り組んだもので、コロナ禍における各大学のCO2排出量のデータを集め、比較しました。はじめは、どうやってポスターにまとめたらいいか悩みましたが、ゼミ生と相談しながら役割を分担して取り組みました。私はパワーポイントで他のゼミ生が作製したものを合体させ、データの不具合を精査する作業を担当しました。
当日、北海道大学の会場で発表したのですが、他の大学の先生などから「季節ごとの違い」「理学部、工学部、医学部など理系、文系の違い」「学部ごとの規模を考慮すべき」などの指摘や質問を受け、もっと幅広い指標でみる必要があることを学びました。
このときは学会で発表することに加えて、増原先生や他のメンバーとともに北海道庁へのインタビューも行いました。早い段階からSDGs未来都市に認定されている札幌市ならではの試みをSDGs推進室の本部長から詳しく伺いました。
この北海道の遠征を通して、防災に関することやバイオマス、環境教育に関することなど幅広い問題に対して、いろんな人が研究をし、どうにかしていこうとしている姿を目の当たりにすることができました。私自身、自分にできることはしていきたい気持ちがより一層、強まるとともに、今後、様々な問題解決のために始められていく政策に注目していきたいと思いました。
空いた時間には、ゼミ生と小樽観光へ行きました。小樽で食べたラーメンがすごくおいしかったのもいい思い出です。
SDGsに関連した行動の社会的要因を研究。SDGs推進の一助に。
現在、大学での学びの集大成として卒業研究に取り組んでいます。テーマは「SDGsに関連した行動の社会的要因とSDGsの具体的内容認識の因果関係に関する分析」です。SDGsという言葉は広まっていますが、実際に行動している人や深い内容まで知っている人はあまり多くありません。では一体、どのような人が行動できているのか。この問題に着目し、行動できている人の学歴、職業など環境的要因を知ることで、SDGsを推進する足掛かりになるのではと考えています。
この一環で、増原先生の指導のもと、性別、年齢ごとに5000人にアンケートを実施しました。本格的なアンケート調査は初めてで、質問項目や分析方法など、いろいろと増原先生にご助言をいただきました。今は、その集計結果を基に環境的要因を解析する作業を行っています。
研究を通して、自分自身のSDGsの実践的な知識も確実に深まりました。「エアコンの設定温度を夏は28度、冬は20度にする」「エコバックを使う」「賞味期限が早いものを買う」など自分にできることから行動しようと心がけています。今後、脱炭素化が進み、生活の仕方が変わっていきます。研究で得た知識は、必ず役立つと思います。
幅広く学んだからこそ見つけた自分に合う道。IT関連企業に就職。
自分は元々、公務員志望だったので、公務員の仕事について学ぶ講義をたくさん受けました。実際に職員の方から話を聞くこともできたのですが、公務員の仕事内容や働き方についての理解が深まる中で、自分には向いていないかもしれないと思うようになりました。
1年生でパソコン関係の授業やゼミでのポスター作製などを通して、IT関係に興味を持った私は、3年生の時にパソコン関係の資格「ITパスポート」と「基本情報技術者」を取得しました。しっかりとした技術、知識を身に着けたいと思ったからです。そして、この知識を活かしてIT関係の職種に絞って就職活動をしました。
3年生の夏と冬、合わせて12社のインターンに参加しました。そこで「就活の軸は決めた方がいい」「インターンには参加した方がいい」など就職活動のノウハウを聞き、その後の活動の指針にしました。それに、その企業が求める人材に、自分の能力と経験が合っているのかを見極める機会になったと思います。
内定をいただいたのは「京セラコミュニケーションシステム」。お客さんからの要望を聞き、システムを作製し、メンテナンスを行う、全ての工程に携わることができます。私は全ての工程を学び、将来は一つのプロジェクトをまとめるプロジェクトマネージャーになりたいと思っています。
大学の4年間は、嫌な体験もいい体験も得られる貴重な機会です。どこの大学を選ぶかより、大学の間に何を学び、何をするかがとても重要です。環境人間学部のようないろいろな学問が学べるところでは、大学に入ってからの経験が深くなると思います。