加古川市役所税務部勤務(2021年卒)/大学生活で得たのは、どんな局面も乗り越えられる「心の持ち方」
地元の市役所で、適正な固定資産税額を決めるための現地調査を行なっています。
大学卒業後、地元にある加古川市役所に入職。現在は資産税課で、固定資産税の適切な税額を決定するための業務に携わっています。対象となる土地の現地調査を行うのが私の主な仕事です。現場には常に2〜3人で赴き、土地の性状、近隣の土地との接し具合などを確認し、国が定めた基準に基づき評価していきます。
音楽好きな私が、心理学を選んだきっかけ。
私の場合はまず、「将来は加古川市役所で働きたい」という思いがありました。加古川市は音楽イベントをはじめ、一般の人が気軽に参加できるさまざまな文化系イベントが市の主催で行われているまち。私は小さい頃から音楽が好きで、今でもピアノとフルートの演奏を続けています。音楽は、年齢を重ねてもずっと楽しんでいきたかったので、「音楽そのものを深く学んで仕事に繋げる」という専門的な道を選ぶのではなく、誰もが音楽に触れられる環境づくりに関わってみたい。それが、地元の市役所で叶うならぜひ働いてみたい、と思ったのがきっかけです。
とはいえ、大学での学びが音楽と全く繋がらないのは寂しいと思っていたところ、心理療法の一つに「音楽療法」があると知り、心理学にも興味を持つようになったのです。いろいろ調べるうちに、兵庫県立大学には臨床心理学の井上靖子先生がいらっしゃると知り「ここなら音楽を取り入れた心理学が学べるかも」と思いました。また、環境人間学部自体に「興味に沿った学びを深められそう」「なんでもできそう」というイメージがあったことも、進路を決める上で大きな決め手になっています。
ゼミでの学びや達成感が得られた卒業論文作成は、大切な経験でした。
大学進学後は、第一志望だった井上ゼミに所属しました。同じく井上ゼミを選んだ同級生に話を聞くと「高校生の時から、このゼミに入りたかった」という人が多いと知り、うれしかったことを覚えています。
ゼミでは主に、箱庭療法や夢分析といったカウンセリングの手法をさまざまに学びました。箱庭療法を学んだ際には、ゼミ生が一人ずつクライアント役になり、実際に砂の入った箱の中に、ミニチュアの玩具を思いのまま並べてもらった後、みんなで対話しながら分析を行っていきました。
卒業論文では『高齢者の音楽体験と生きがいの関係について』をテーマに掲げ、井上先生が講師をされている姫路市の高齢者大学や、私の祖母が通っている別の高齢者大学でアンケート調査と取材を行い、「音楽がもたらす高齢者の心理状態」を読み取っていきました。その結果から、音楽を通して子どもの頃や若い頃を思い出す作業は人の心を前向きにし、生きる活力になっていることが判明。カラオケや楽器演奏はコミュニケーションツールであると同時に、健康維持のツールになっているのではと考察しました。
井上先生は「音楽が好き」という私の思いを尊重してくださり、このテーマも一緒に考えていただきました。おかげで4年間の集大成となる卒業論文にしっかり取り組め、達成感を得られたことは、私の人生においても大切な経験だったと思っています。
学びでも、部活動でも貫いた「音楽が好き」という思い。
ゼミとは別の話になりますが、井上先生が、私に楽器演奏を依頼してくださったことがありました。コロナ禍のクリスマス前には、井上先生がカウンセラーをされている児童養護施設の子どもたちに向け、「クリスマスソングの演奏を動画で撮影させてほしい」とお声がかかり、私はピアノを担当し、フルートとサックスができる仲間を集めてクリスマスソングメドレーを演奏。同じ動画の中では、フルートを演奏できる児童と一緒に『銀河鉄道999』も合奏しました。このような機会に声をかけてくださったことは、今でもうれしい思い出です。
部活動は、弦楽器だけで構成されるストリングオーケストラ部に入り、バイオリンを担当しました。それまでバイオリンの経験はありませんでしたが、昔からバイオリンが音を奏でる仕組みに興味があり、いつか自分で演奏してみたいと思っていたのです。入部にあたって不安もありましたが、ストリングオーケストラ部は初心者でも入部できたので、思い切って挑戦してみました。
部の運営や定期演奏会など、さまざまな場面で部員同士の意見が対立することもありました。特に私の同期は初心者と経験者が半々だったので、取り組む曲の難易度も課題の一つでした。しかし、その都度話し合いを重ね、演奏会当日はみんなで演奏を楽しみ、観客のみなさんからたくさんの拍手をいただくことができました。
卒業した今も、現役生が開催する演奏会を観に行くなど、集まる機会を楽しんでいます。
仕事で生かされている、書く力、聴く力。
入職して3年目となる今は、後輩も増えるとともに仕事の引き継ぎも多くなってきました。今も、誰が見ても理解できる引き継ぎマニュアルを作ろうとしているところ。これは大学在学中、一年ごとに部員が入れ替わっていく部活動でも個人的に意識して取り組んだことでした。部全体のこと、演奏会の運営など、「誰が読んでも理解できるわかりやすい書面」を残そうと心がけてきたことが、本当に力になっています。また、業務上、文章を書く機会も多いのですが、物事を考えて文章に組み立てる「文章作成力」も大学で培えたと思います。
税額の算定について問い合わせの多い電話対応や窓口業務の際も、しっかり理解して納得していただくために、順序立ててわかりやすく説明することはもちろん、相手の気持ちに共感しながら聴く、臨床心理学の学びで身につけた「傾聴」の姿勢が役立っています。
現在は、音楽イベントに携わる部署とは異なる部署にいますが、市役所のロビーに『まちかどピアノ』が設置されているので、誰でも自由に演奏できる開放日には弾きにいってリフレッシュしています。
いま、やりたいことがなくても、焦らなくていい。
社会人になったら、自分のために使える時間が少なくなります。だから、遊びでもなんでも、やりたいことは大学生のうちに楽しんでほしいし、目の前のことを一生懸命やってほしいなと思います。
今やりたいことがない人も、焦らなくていいと思います。でも、悩みすぎる時間はもったいない。サークルや部活動選びの際も、1回入ってみて(違うな)と思ったら悲観的にならず、辞めたらいい、それくらいの気持ちでいいと思います。
そんなことを言っている私も、知らないことを怖がる気持ちはありますし、失敗や無駄を恐れる人の気持ちもわかります。だけど、「音楽が好き」という気持ちだけは自信がありました。
難しいことに直面したときに、悪い方向に考えない心の持ち方が得られたのも、臨床心理学の学びや話し合いを重ねた部活動の体験、私の思いを卒業論文に繋げてくださった井上先生など、大学でのさまざまな出会いがあったから。自分を肯定できる環境が、兵庫県立大学にはあると思います。