かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2024.04.18

マリンフード株式会社勤務(2018年卒・2020年修了)/社会情勢の変化に動じず、 クオリティの高い食品を届けたい。

食品メーカーで、主力商品を開発する研究チームに所属。

私が勤務するマリンフード株式会社は、バター、マーガリン、チーズ、ホットケーキなど、さまざまな食品の製造・販売を手掛ける食品メーカーです。外食産業や学校給食などで使用される業務用食品と、スーパーなどの店頭に並ぶ家庭用食品の両方を手掛けているほか、コレステロールカットやアレルゲン低減化食品など、機能性を持つ食品代替品や、大豆ミートや植物性チーズといった植物性代替食品を積極的に開発。食品企業として、つねに美味しくて、安心安全なものを届けられるように務めています。

私が在籍する研究部にはいくつかのチームがあり、私がいるチームでは当社の主力商品の一つであるプロセスチーズやナチュラルチーズの食品開発を担当しています。近年は世界的な情勢も影響し、あらゆる原料が高騰しています。そうした状況の中でも美味しいものをいかに安く作れるかを重点的に考え、今の味やクオリティを変えない、もしくは、さらにクオリティを上げることにこだわりつづけたいと思っています。

お客様の声を直接聞くことも。やりがいの大きな仕事です。

食品開発のほかにも、完成品に関する微生物調査や工場内の温度や湿度といった環境チェックなど、品質管理や品質保証にかかわる業務を行なっています。当社の社風として、研究員が新商品の開発から完成後のチェックなど、一つの食品が出荷されるまでのほぼすべてのプロセスに幅広く関われることに、とても大きなやりがいを感じています。
またこれは、入社してからわかったことなのですが、当社の「お客様相談室」は私たち研究部が対応しているんです。時にはクレームをお受けすることもありますが、ほとんどが「美味しかったよ」という声で、「もらった商品が美味しかったんだけど、どこで買えますか?」と言ったお問い合わせをお客様から直接受けられるのは本当にうれしいですし励みになります。どんなお声でも、一つひとつを貴重な機会だと感じながら対応しています。

管理栄養士なら、食や料理を理論から学べるはず。

もともと私は料理をするのが好きで、調理学校へ進学し美味しいものを作りたいと考えましたが、食に関わるなら理論からしっかり学びたいと思うようになりました。いろんな道を探すうちに、管理栄養士なら食と向き合えるチャンスも多いだろうと考え、兵庫県立大学のオープンキャンパスに参加。雰囲気の良さに惹かれて進学を決めました。調理が好きな私は、大量調理や給食実習、病院や老人ホームでの臨地実習を通じて、学生のうちから現場の空気を感じられる学びが印象に残っています。

先生の人柄に惹かれて、村上研究室へ。

大学3年から大学院修士課程まで、食品機能学を研究されている村上明先生の研究室に所属しました。当時、村上研究室は新しくできたばかり。私は基礎研究に興味がありましたが、話しやすくて、積極的な学生にはしっかりフォローくださる人柄に惹かれたこともこのゼミを選んだ理由の一つです。

村上研究室では、抗酸化作用などの機能性をもつファイトケミカルという化合物を研究しました。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、酸化させる力が非常に強い酸素になるといわれています。体内で増えた活性酸素を除去していくことで、老化や生活習慣病などの予防になりますが、活性酸素から体を守ることを「抗酸化作用」といいます。

皆さんがよく聞くポリフェノールもファイトケミカルの一種で、害虫や紫外線から自分の身を守るために植物自体が作り出した化合物であり、多くの植物が持っている物質群です。ポリフェノールが体内に取り込まれると、抗酸化作用などの効果が期待できますが、「なぜ効果があるのか」という部分は実は未解明でした。

村上研究室では、適度なストレスは身体に良いという概念「ホルミシス」に注目し、体内に取り込まれたファイトケミカルの動きを解明する研究を実施。実証実験の結果を日本農芸化学会でポスター発表では優秀発表に選ばれました。

実験を繰り返したプロセスは、食品開発の仕事に似ている。

食品開発の仕事の進め方や考え方も、研究のプロセスと非常に近いところがあると思います。大学在学中に行ってきた数々の実験は、一つの新商品が誕生するまで何度も繰り返される「試作」に通じます。

研究時の効率を改善するフレームワーク「PDCA(plan、do、check、action)サイクル」は、食品開発の分野でも必要不可欠。商品や研究の説明だけなく、自分の意見を簡潔に伝える場面が多いので、研究中のディスカッションなど、大学で鍛えられた力は今の仕事で生かされています。

自分の力を社会で生かすためにも、コミュニケーションを恐れないで。

たくさんの知識や高い技術を持っている人でも、コミュニケーション力がなければ社会で生かされることはありません。これは、私自身も在学中から意識していたことですが、人と接することをはじめ、何事にも積極的にむきあうことを恐れず、大事にしてほしいと思います。自分の意見を伝える、わからないことや疑問があったら教授に聞きに行く。誰にも何も聞かなければ、ゼロはゼロのままです。環境人間学部には、村上先生のように、1聞くと10も15も教えてくれるとても親身な先生がいらっしゃいますから、そういう出会いの機会を逃さないでほしいと願っています。

 

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