神戸市中学校教員(2022年卒)/悩みながらも、いつも全力。 子どもたちの存在が、私のやりがい。
中学校で保健体育を教えています。
私は、神戸市内の中学校で保健体育を担当する教員(臨時的任用教員)です。大学卒業後、今春まで赴任した中学では、1年生生徒99名の成績管理などを行ったほか、クラス担当、女子バレーボール部の副顧問も兼務。教員1年目からさまざまな経験をさせていただきましたが、(もっと臨機応変に動けていたら、してあげられることがもっとあったはず)と、自分の勉強不足を感じる毎日でした。
そうした中でも、自分の気持ちをうまく口に出せない生徒にも、話しかけられやすい雰囲気をつくることを心がけました。ある日、職員室にいる私のところに相談に来た生徒がいました。本来ならその子は他の授業を受けている時間でしたが「ま、いっか。一緒に話ししよ!」と、部室に移動して話をしたこともありました。何度かそのような時間を設け、生徒がうれしそうな表情で帰って行く姿をみて、(少しは役に立てたかな)と感じた時は、私の気持ちも安らぎました。
大人をハッとさせる、生徒たちの洞察力。
副顧問をしていた女子バレーボール部では、部活動に対する考え方が違う生徒たちを一つのチームにまとめる難しさを感じました。勝負にこだわる生徒もいれば、みんなで楽しくプレーできればいいという生徒もいますから、顧問の先生とも「なにかあったときだけ、私たちが動こう」と、基本的には見守る姿勢を心がけました。そんな中で、「みんなで楽しく」を優先していた生徒たちがチームで一致団結する大切さに気づいてからは、プレーがアグレッシブになり、積極的に声を出すなど、自然と意識が変わっていったのです。ちょっとしたきっかけで、目まぐるしく成長していく生徒たちからは、いろんなことに気づかされました。
その学校は1年で離れることになりましたが、離任式の日には生徒たちからたくさん手紙をもらいました。「話しやすかった」「岸本先生みたいな大人になりたい」とうれしい言葉をかけてくれて、(先生になってよかった)と心から感じました。運動会や文化祭などの行事を、全力で参加していた私の姿を見ていたのでしょう。「一緒に楽しんでくれたのがうれしかった」「子どもたちに全力で向かってくれる大人になりたい」と言われた時は、本当にうれしかったです。この仕事のやりがいは何かと問われると、子どもたちの存在自体が私のやりがいです。
教育実習で、気持ちを新たに。
教員課程の勉強だけでなく、いろんな分野が学べる国公立大学を志望し、兵庫県立大に入学しました。4年次の教育実習では、実習先の生徒たちが私を一人の先生として接してくれているのはうれしい反面、できないことが多くて、複雑な気持ちのまま終わりました。教育実習生といえども、生徒にとっては「先生」。授業をもっとうまく運ばないと……、子どもたちとしっかりかかわりを持たないと……と気持ちばかり焦る日々でしたが、生徒との向き合い方が全力か否かで、生徒の反応が違うことも実感しました。私自身がそうでしたが、学生生活は人生のなかでも濃密なものです。その日々に教員として自分が関われるのならやっぱりうれしい、と教員になる気持ちが固まりました。
信頼されるマネージャーになりたくて、トレーニング科学のゼミに。
また、大学在学中は、アメフト部のマネージャーを勤めました。マネージャーには、選手の体調や表情の変化に目を配る重要な役目があり、時には無理をしようとする選手を止めなければいけないこともあります。選手から信頼を寄せられていた、憧れの先輩マネージャーのように、私も「どうやったら技術が向上するのか」「どうやったら体がもっと大きくなるのか」という選手たちの悩みに応えられるマネージャーになりたくて、「トレーニング科学」を研究する森寿仁先生のゼミに所属しました。
ゼミでは、トレーニングに関する疑問や課題を明らかにするために、日常生活では触れることのないさまざまな測定機器を使って実験や検証を行いました。実験手法だけでなく、実験から得られた結果をわかりやすく他者に伝えることや、固定概念にとらわれず、あらゆる角度から物事を見る大切さも学び、そのどれもが貴重な体験でした。また、森先生のご厚意で、これまでに経験したことのないスポーツにトライし、ゼミ生同士の仲が深まったことも印象に残っています。
環境人間学部で実感。「想像以上にいろんな世界が広がっている」
環境人間学部には、私のように教員志望の学生のほかにも、建築業界を目指す学生、美容業界を目指す学生、天気予報士になりたい学生など、目指すフィールドが違うユニークな学生が集い、専門領域以外のいろいろな学びを深められます。私が担当する中学生は、まだ自分の将来や社会に出ることを現実的には考えられない年齢です。そんな世代の子どもたちにも、自分たちが思っているよりもいろんな世界が広がっていること、未来には、目指せる分野がいっぱいあることを、実感を持って伝えられます。そして、教員として私が伝えてきたこと、してきたことで「教師っていいな」「こういう世界もあるんだ」と思ってもらえたら、それは私の思いが伝わっている証です。
交流を広げて、時間を大切に。
教員は子どもから大人まで、いろんな世代と対話するのが仕事です。100人が100人とも違う考え方を持つ中でコミュニケーションを重ねていきますので、学生のうちから、いろんな考え方の人と交流をもってほしいと思います。私の場合、大学在学中にコロナ禍となり、約2年の間、大学にもアルバイトにも行けない時期が続き、人と話す機会が少なかったから、なおさら強く思います。そして、時間を大切にしてほしいと思います。休日に子どもたちのことを考えるのは苦ではありませんが、社会人になると、自分のために使える時間は少なくなります。自分のためになると思う経験を今のうちにやってみてください。