かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2023.12.20

【解説】ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)の「幻の温室遺跡」の発見/水上 優(建築設計)

水上 優(環境人間学部環境デザイン系)

 

今夏、「旧山邑家住宅(現ヨドコウ迎賓館)」の隣接敷地の発掘調査(指導:足立裕司神戸大学名誉教授)が行われ、貴重な遺構の存在が確認されました(図1)。

図1

当館は、帝国ホテル新本館建設のために来日中のアメリカ人建築家フランク・ロイド・ライトが設計し、ライト帰国後に弟子の遠藤新(えんどう・あらた)と南信(みなみ・まこと)が受け継いで、1924年頃に完成させました。雑誌「新建築」1925年9月号には、竣工当時の写真とともに平面図が掲載されていますが、そこには現存する本邸東側の一段下がった敷地に「温室」の平面図、立面図、屋根伏図が掲載されています(図2〜4)。

図2

図3

図4

 

図2~4 出典:「新建築」第1巻第2號、新建築社、1925年9月

温室建物は現在失われていますが、当該敷地に降りていく鉄筋コンクリート製の階段の一部は現存し(図5)、温室の外観写真も存在しているので、温室建物が実際に建設されていたことは確かでした。

図5

今回の調査で上述の図面にほぼ重なる平面構成の遺構が出土しました。大谷石の敷石には山邑邸のバルコニーにあるものと同じ装飾が施されていました(図6)。

図6

温室の主要部分の敷地は1960年の芦有道路整備に伴う道路拡張工事による敷地削減で既に失われていますが、温室平面の端部が出土し、特徴的な五角形平面を構成する敷石の角度が図面通りであることが確認されると同時に、図面にない階段の存在も確認されました(図7)。

図7

また鉄筋コンクリート造の基礎の上に木造の構造体が載っていた痕跡も発見されました。これは温室の構造が旧山邑邸の構造とは異なることを意味しています。また南側に池と、そこに流れ込む水が湧き出る滝の痕跡も確認されました(図8)。

図8

上述「新建築」に掲載された南信の解説文では、これが「水の如き建築」であり「水が淵となり瀧となった姿」であると言われています。今回発掘調査された東側敷地が建物全体の構成要素として重要な意味を持つことが改めて確認されました。

今回の調査で遺構が出土したことは驚きでした。温室取り壊し後に社員寮が建設された経緯があることから、その敷地に温室の痕跡が残っている可能性は低いと考えられていたからです。今回の発見の背後には、社員寮建設時に温室の遺構部分をうまく避けるという、当時のヨドコウの配慮があったのです。

 

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