留学とゼミ活動を通して、世界的視野を持ち、多文化共生「在日ムスリムの現状」を研究(乾 美紀ゼミ)【兵庫県立加古川東高校】

「自分が本当に学びたいこと」を考え、大学を選びなおして環境人間学部へ
レベルの高い高校で、勉強面でついていくのが必死でした。部活では吹奏楽部に所属し、アルトサックスを担当。パートリーダーとしてチームをまとめました。3年生の4月でほとんどの人が引退する中、私は8月のコンクールまで残り、ソプラノサックスでソロパートを任され練習に明け暮れました。おかげで、兵庫県大会で金賞を受賞、関西大会に進むことができました。現在もOBの吹奏楽団に所属し、定期演奏会やコンクールにむけて毎週、練習しています。知らない先輩、後輩ともつながることができ、音楽の好きな人たちと共に演奏できる時間はとても充実しています。

進路については、高校3年生の春頃から担任の先生との面談を通して考えていました。高校2年生の時に「数学は難しいから」という理由で、文系を選択。いざ、大学進学を考えた時に文系の学部で進みたいものが見つからず、塾の先生が薦めてくれた大学や就職にいいと考えられる学部をただ選んでいるだけでした。でも、だんだん「自分のやりたいことなのかな?」と疑問に思うようになりました。
「本当に学びたいこと」を考えると、中学生の頃、家族旅行で訪れた長野県上高地の景色が思い浮かびました。山、川、空の美しさに感動。自然や田舎に興味を持ち、環境や自然のことを学んでみたいと思っていました。

全国大学案内の冊子から、「環境」「自然」の文字を見つけては、付箋をはってピックアップ。ほとんどの大学が理系である中、文理の区別なく学べる文理融合系の環境人間学部を見つけた瞬間、「ここだ!」と思いました。
多文化共生や国際教育について研究されている乾先生の授業を通して、世界への関心が深まる。
大学に入って、科目名とシラバスを見て、面白そうだと思う授業を積極的に履修。中でも心理学、倫理学のような答えのない問いを考える科目に興味を持ち、いろいろな人の意見を聞いて話し合うことが楽しく思えました。
乾美紀先生の「グローカルリーダー入門」ではベトナム難民の方から話を聞く機会があり、母国からボートで逃れ、たまたま通りかかった船に救助された話に「こんな世界もあるんだ」と驚きました。授業を通して、多文化共生や国際教育を研究し、東南アジアの国ラオスにフィールドを持って活動されている乾先生自身にとても興味を持ちました。
1年次の後期で系選択をする際には、乾先生がいらっしゃることと、授業を受けて面白いと思った心理学、倫理学が学べる人間形成系を選択しました。
2年次でも、1年次と同様に興味のある授業を系に関係なく履修しました。系選択した後でも、他の分野を幅広く学べるところが環境人間学部のいいところで、いい意味で専門専門していないところが、いろいろなことに興味がある私には合っていたと思います。
「環太平洋文化」の授業で、捕鯨問題を取り扱った動画を見て、捕鯨の文化を守る一方で、動物保護の問題とどうバランスをとっていくのかを考え、いろいろな観点から捉えることの大切さを学びました。
「環境人間学演習Ⅰ」では、乾先生の授業「兵庫県の中の多文化と国際協力を知る」を履修。フィールドワークでイスラム教徒の礼拝施設であるモスクを訪れ、その時点では宗教観についていくことができず、恐怖に似た感覚を味わいました。
1年間休学して、カナダへ留学。貴重な経験は、自分の自信に。
1年次が終わる頃から、コロナ禍で授業のほとんどがリモートで行われたこともあり、「何もしないまま大学生活が終わってしまう」という焦る気持ちが芽生え、大学在学中に苦手な英語を習得しようと、留学を考え始めました。でも、その頃は、入国できる国が限られていて、留学許可も得にくい状態でした。海外にフィールドを持つ乾先生に相談したところ「ぜひ、行くべき」と背中を強く推していただき、大学3年目の1年間を休学して、カナダへ留学することを決めました。
カナダ入国後は、ホストファミリーの家へ。その家に滞在できるのは1か月間のみと現地で知らされ、すぐに家探しを始めました。まだ英語も十分に話せない状態での家探しは大変でした。語学学校で知り合った人たちに助けてもらいながら、SNSを駆使して何とか家を探すことができました。
語学学校では、中国、韓国、台湾、イタリア、メキシコなど世界各国の人たちと交流を深め、カナダの観光地を巡るなど楽しい思い出ができました。留学の目的の一つだった「モレーンレイク」も観ることができ嬉しかったです。

半年間の語学学校終了後は、ファーストフード店でアルバイトをして生活費を稼ぎながら生活しました。留学当初は、自分の実力のなさに落ち込み、毎晩、泣いて日本に帰りたい気持ちでいっぱいでした。でも、せっかく来たんだからという思いで耐えているうちに、コミュニティの中に自分の居場所をみつけ、カナダの美しい景色や人との会話に助けられ、1年後には日本に帰りたくないと思うように。この留学は、自分の経験値をあげ、自信につながった1年になりました。

乾ゼミでの活動の一つ「アジア大学生の国際交流サミット」に参加。教育で取り残された子どもたちへの支援を考える。
帰国後の3年次、海外留学で得た知識を活かせるのではと、海外にフィールドを持ち様々な活動をしている乾ゼミに所属しました。ゼミに入った当初は『ASEAN諸国の学校に行けない子どもたち』(乾美紀編著)を読んでまとめ、発表することで知識を深めました。私以外のゼミ生は、乾先生が担当されている学生国際協力団体「CHISE(チーズ)」に1年次から所属し、実際にラオスに赴き、子どもたちの教育環境の改善のため活動をしていたので、各国の教育制度、子どもたちの置かれている環境、教育に対する考え方、貧困の割合など、多くのことを学ばせてもらいました。
ゼミ活動の一つで、トヨタ財団の助成金を受けて開催されている「アジア大学生の国際交流サミット」に参加。これは、日本、韓国、ラオス、インドネシア、カンボジア5か国の学生が、自国の教育で取り残された子どもたちに学生の視点からどのような支援ができるかを考えるプロジェクトで、半年に1回程度、各国でサミットを開催しています。
3月にインドネシアで開催されたサミットで、私たちは、学生ボランティア団体「Jyoto’s」での活動をプレゼンしました。在日ベトナム人や在日中国人などの子どもたちを対象にした学習支援活動「補習教室」や、普段から「補習教室」に通う子どもたちの夏休みに「宿題教室」を開き、学校の宿題を手伝うだけでなく、子どもたちにとって難しい課題でもある「自由研究」に一緒に取り組み、スライムを作る実験を行ったことを報告。参加国の学生からフィールドバックをもらい、その成果や改善点などを話し合いました。

在日ムスリムへのインタビューから、「在日ムスリムにおける日本への適応に対する経年的変化」を研究
イスラム教徒が大半のインドネシアを国際交流サミットで訪れたのが「ラマダン」と言われる断食の時期で、日が沈むまで一切飲食をしてはいけないなど、日本とのライフスタイルの違いがあまりに大きく興味を持ちました。
また、同サミットがカンボジアやインドネシアで開催された後、神戸で開かれ、ホスト国として会場準備、日程計画などを乾ゼミが担いました。その際、イスラム教で食べてもよいとされる「ハラルフード」を用意するのに苦労した経験から、在日ムスリムの人たちの生活について卒業研究として調べてみようと思いました。
研究は、シリア人で兵庫県立大学国際商経学部特任助教の青柳ヤヒヤ先生をはじめ、在日ムスリムの方々へのインタビューを中心に進めています。ヤヒヤ先生とは、兵庫県立高校に通う在日シリア人の高校生とヤヒヤ先生との対談を冊子にする際、英語から日本語に通訳をさせていただいたことがご縁で知り合い、ご協力いただくことになりました。
インタビューでは「イスラム教の食事や礼拝に関する戒律を守るうえで、困難はあるか?」「来日当初と比較して、ムスリムにとって日本は住みやすい国になっているか?」などの質問をし、「ハラルフードの店が増えている」「アルバイト先に礼拝場所がある」「祈祷室が大阪駅、関西空港にできた」など、日本もムスリムにとって暮らしやすいように改善されているという意見を聞くことができました。さらに、同じムスリムでも、日本での暮らしで感じる困難に地域差があるのか、出身国別に調べ、在日ムスリムの人たちの現状をまとめたいと思っています。
在日ムスリムの中には、日本語が話せない人もいるので、留学で身につけた英語がとても役にたちました。自分にしかできない研究になったと思っています。

「日本の優れた文具を世界に広めたい」大手筆記具メーカーに就職。大学でのいろいろな経験が糧に。
3年生の春から、日本の良さや秀でた技術を海外に広められる企業に就職したいと、家具、インテリア、服飾、旅行、航空など様々な業種の就職イベントに参加しました。中でも、留学時に、母国語によって使いやすい筆記用具が違うことに気づき、面白いなと文房具業界に興味を持っていました。面接試験においての私の意見を肯定的に聞いてくださる姿勢や、社員の方々が楽しく仕事されている様子を伺い、三菱鉛筆株式会社に就職することを決めました。日本の優れた文房具を世界中に広げるような仕事がしたいと思っています。
私は、いろいろな経験を通して、視野を広げることができました。就職活動の際にも、多くの企業が私の経験に興味を持ってくださいました。多くの機会を与えてくださった乾先生には本当に感謝しています。
時間に余裕のある大学生のうちに、とにかく足を動かして、いろいろな所に行き、いろいろな事を見ることが大切です。今しかできないこと、ちょっとでも興味のあることは全部やってみたらいいと思います。
