かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2024.04.05

趣味から生じた疑問を解決するため大学院へ。南の島のヤモリの研究。(共生博物分野:系統分類研究室 博士前期課程2年)

きっかけは趣味で飼育していたヤモリ

私は自然が好きだったので、学部では近畿大学農学部で環境や生き物について幅広く学んでいました。そして、そんな大学生活の中でどうしても研究したい、と思うようなテーマに出会いました。それがヤモリの研究です。

当時私は大学の授業とは別に、地域固有の生き物を見るために趣味で沖縄の島々に通っていました。そうした活動の中、いく先々でもともと好きだったヤモリを捕まえて持ち帰り飼育していたところ、同じ種類のヤモリのはずが島ごとにわずかながらも外見が異なることに気がつきました。この発見をきっかけに琉球列島の島々に通い詰めるようになり、さらなる発見も多くありましたが、やはり独学では厳しいものもあり、大学院に進んでヤモリの分類に関する研究をしたい、と強く思うようになりました。

そして当時私がいた大学には爬虫類を専門とした教員がいなかったため、より専門的なことを学べる環境を求めて太田英利先生のもとを訪れ、兵庫県立大学の大学院に進学することとなりました。

ヤモリを求めて日本最西端へ

大学院での分類の研究で対象としたのは、日本の最西端に位置する与那国島に生息しているヤモリでした。

私がこれまで集めていたヤモリは、ミナミヤモリという九州南部から琉球列島、台湾、中国東部と非常に広い範囲に生息しているヤモリで、与那国島に生息しているヤモリもそのミナミヤモリと呼ばれるものでした。しかし先行研究からミナミヤモリの中には複数の隠蔽種が含まれていることが示唆されており、与那国島のものもまた体が大きく他の島のものとは違った雰囲気でした。

私はまず最初に与那国島に行き、太田先生に案内していただいて島中を周って1週間で約70匹のヤモリを捕まえ、これらの標本の計測などをすすめました。

与那国島のミナミヤモリ

研究資金を得るため

こうして研究をしながらも勉強を重ね、秋には笹川科学研究助成というものに応募しました。これは、大学院生や若手の研究者を対象に様々な分野で研究費の支援を受けられる研究助成です。私の研究は何度も沖縄に調査に行くほか、遺伝解析も行うのでお金がかかり、こうした金銭的な支援が必要不可欠でした。

研究費を得るために申請書を書くというのは初めての経験で、書き方など手探り状態の部分も多かったものの、太田先生のご指導や添削により、約60万円の助成金を勝ち取ることができました。

その後は助成金などを使いながら屋久島、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島などさまざまな島をめぐってヤモリを集め、標本の計測をおこないました。
こうして比較対象となる多くの産地のヤモリが集まってくると、大きさや鱗の並び、模様のパターンなど、集団間の違いが見えてきます。データが集まったら多変量解析の一種である主成分分析という手法を用いて各標本の計測値をまとめて解析して形態の傾向を可視化し、与那国島の集団の形態的特徴が異なることを明らかにしました。

 

与那国島の風景

他大学の研究室との交流も

遺伝解析については、琉球大学の熱帯圏生物研究センターに行って、ヤモリの研究をしている先生と博士課程の先輩のご指導を受けながら実験をしました。ここでは、これまでに集めてきた標本の一部を使い、肝臓や尾の組織からDNAを抽出、増幅するという作業を2週間かけておこないました。

限られた時間の中で大量のサンプルを混ざらないよう正確に処理しなければならず大変な作業でしたが、普段とは違った環境で指導を受けたり、空いた時間琉球大学の方々とフィールドに出たりヤモリの話をしたりと刺激を受け、また、新たな人との繋がりもできました。

その後、遺伝解析の結果が出るまでに時間はかかりましたが、興味深い結果が得られ、なんとか修士課程の二年間で研究がまとまりました。

現在は今回の研究結果をもとに国際誌への論文投稿を目指して残る作業を進めています。

人生を後悔しないよう、やりたいことに挑戦

卒業後はこれまでに身につけてきたフィールドワークや生物、自然に関する知識を活かせる環境アセスメントの会社に就職が決まっており、沖縄とは真逆の北海道で生活することになりました。雪国にはあまり馴染みがなく慣れない環境であるほか、ヤモリがいないのでその点は残念ですが、北海道には固有の生き物も多く楽しみな気持ちのほうが強いです。今後も仕事でも趣味でも自然や生き物と関わりながら大自然を満喫していきたいと思います。

大学院への進学はただ自分が面白いと思ったことを突き詰めて自由に研究できる最後のチャンスとも言えます。

一度しかない人生、みなさんももしやりたいことがあって迷っているのであれば、就職する前に大学院に進んでみるのもよいのではないでしょうか。

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