かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2022.05.20

【ゼミプロジェクト】姫路の鳥瞰絵図を超巨大に拡大展示~地域アートを広める試み(教員:井関 崇博)

こんにちは。社会デザイン系教員の井関崇博です。環境人間学部の教員で、コミュニケーション、メディア、広報といったキーワードで研究しています。今回は、私の研究室が昨年、地域の団体である播磨学研究所と一緒に開催した「姫路城下巨大鳥瞰絵図展」についてご紹介したいと思います。

地域のアート作品を大学の研究室がいかに社会に広めるか。こんな観点で取り組んだ事例で、誰が、どのように動き、そしてその結果として何が生まれたのか、私の目線からレポートします。

地域、文化、アート、鳥瞰絵図、メディアについて関心のある方、あるいは大学のゼミってどんな活動するの?と思っている学生や高校生の方に読んでもらえたらと思います。

はじまりのメール

世界中がコロナで大騒ぎになっていた2020年7月のある日。1本のメールが私のもとに送られてきました。差出人は志賀咲穂先生。以前、環境人間学部で建築学を教えられていた先生で、定年で大学を退職され、その後、本学部の隣の建物に拠点をおく播磨学研究所にうつり、姫路城に関係するプロジェクトを進めるなど、地域のために尽力されている方です。

「ご相談」というタイトルのメールには、次のような主旨のことが書かれていました。「播磨学研究所で姫路城下の都市鳥瞰図制作に取り掛かっている。神戸の鳥瞰図を描いておられる青山大介さんにお願いして、現代の姫路を描いてもらおうという企画を進めているので、井関先生にも情報発信の面で協力してもらえないか」

姫路城下?都市鳥瞰図?青山大介さん?面白くなりそうな予感はしましたが、まだ、私の頭の中ではぼんやりしていて、正直、その時はまだピンと来ていませんでした。ところが、直接お会いして詳細を伺ったところ、これが極めて興味深い企画だったのです。

実は、姫路城とその城下は昔から「描かれてきた歴史」があるのだそうです(詳しくは、姫路城アーカイブ)。例えば、城郭の構造をしめした姫路城図、周辺の屋敷の配置を示した屋敷図、浸水被害状況を記した浸水被害図など。これらは真上からみた、立体感のないいわゆる平面図なのですが、鳥の目線で描く鳥瞰図もいくつか描かれてきました。代表的なものが、越前市大谷家に残る「姫路城図屏風」(1741)。また、戦後直後の1947年、吉田初三郎によって描かれた「觀光の姫路市= Bird’s eye view of Himeji」も有名とのこと。鳥瞰図は平面図と違って建物や樹木、時には人や行事も描かれることがあるため、その当時の風景をうかがい知ることができるし、その表現に作者の個性も現れるのだそうです。

100年後、200年後に今の姫路の姿を

志賀先生の企画の意図は、この「城下を描く」という近世から続く歴史を引き継ぐこと、つまり、現代の姫路の姿を鳥瞰図として表現し、100年後、200年後の世代に伝えていくというものでした。今は文化財となっているこれまでの作品に並び立つような作品を、自分たちの力で生み出していこうということです。何と面白い企画でしょうか!私はこれほど意義深いプロジェクトに関われるなんて!と心が躍る思いで先生のお話を聞いていました。

先生の問題意識はさらに現代の姫路にも向けられていました。かつて城と城下は政治、経済、文化の面で密接につながっていました。しかし、明治維新後、城の主はいなくなり、国宝になり、世界遺産になり、観光地になっていく過程で、城とその周辺の関係は薄れ、近隣の人であっても城を意識することは少なくなりました。町の方も姫路城とは関係なく発展していっています。これは大変にもったいないことで、このような状況を改めて考え直すきっかけにしたいというのが志賀先生のもう一つの想いのようでした。

非常にスケールの大きく、社会的な意義もある企画だったので、私は二つ返事で引き受ける旨、お返事をしました。これがその後、1年半にわたるプロジェクトの出発点になりました。

余談ですが、志賀先生によると、このような都市鳥瞰図はヨーロッパの都市でもよくあるそうです。先生は建築学が専門なので、ヨーロッパの建築を視察しに行く中で、この鳥瞰図に興味をもち、多くの鳥瞰図を入手されてきました。私もそのいくつかを見せていただきましたが、日本の都市の鳥瞰図とはまたちょっと一味違ったものでした。

鳥瞰図絵師、青山大介さんとの出会い

志賀先生は絵師の青山さんや地域の有識者等をメンバーに姫路城下鳥観図制作実行委員会を立ち上げられました。私もその一員とさせていただいたのですが、2020年9月、第1回の会議室が開催され、そのとき、はじめて私は青山さんとお会いすることになりました。

青山大介さんはこれまで神戸や大阪等の鳥瞰図作品を独自のスタイルで描かれてきた方でした。青山さんの鳥瞰図の特徴は、風景画のように主観的に描くのではなく、精度の高い地形図をベースに、その地上部に存在する建物を立体的に立ち上げていくというものでした。それゆえに青山さんの作品は非常に緻密に描かれ、かといって写真とは異なり、色付けも含めてユニーク。細部に寄ってみると何か絵本の中にいるような気になってきます。

こんな魅力的な作品を生み出される方なのだから、さぞかしアーティストとしてのオーラを四方に発している方かと想像していましたが、実際にお会いしてみると非常に物腰が柔らかく、気さくな方でした。その後、私のフィールドワークの授業にお招きし、学生と一緒に姫路城の周りを一日かけてゆっくり歩くという機会があり、その際にも鳥瞰図のこと、姫路のことなど楽しくお話させていただくことができました。

鳥瞰図の描き方

鳥瞰図の制作は2020年の9月頃にスタート。青山さんによると、鳥瞰図の制作は以下のステップで進むのだそうです。

①資料収集や街並みの撮影等の基礎調査
②地形図を下敷きにしてトレーシングペーパーに街並みをペンで描く
③数枚に分かれたトレーシングペーパーをスキャニングし、コンピューター上で統合
④描画ソフトで色をつけていく

こう書くと意外にシンプルですが、②の作業がすさまじいことは皆さんも容易に想像できると思います。

制作がはじまって11ヵ月後の2021年7月、鳥瞰図は無事完成。作品は「令和の姫路城下鳥瞰絵図2021」と名付けられました。「令和」という元号を頭についている点に志賀先生の企画の意図が表れています。

神戸新聞記事:「姫路城下の鳥瞰絵図、絵師が描く 観光案内所で展示」

ゼミ・プロジェクトとして「知ってもらう」を担う

志賀先生が企画し、青山さんが制作、いよいよ、この鳥瞰絵図を多くの人に知ってもらう普及のステージに入り、バトンが私のところに回ってきました。

私はこれを自分の「ゼミ・プロジェクト」として実施することにしていました。私の研究室では毎年、所属する3年生が「ゼミ・プロジェクト」と称して、何かしらメディアをつくる取り組みを行っています(環境人間学部では3年進級時にゼミに入り、そこから2年間、同じメンバーで活動や研究を行うカリキュラムになっています)。毎年、5人程度の学生が動画制作、イベント開催、大学広報紙の制作など、いろいろなプロジェクトを実施してきました。

ゼミ主宰者として、毎年、ひやひやするのが、プロジェクトの初動期。私が用意するネタに学生が興味をもってくれるかどうか、実は結構不安なのです。プロジェクトを担う本人たちがやはりテーマに興味をもち、ワクワクしながら取り組めると、その後の動きも、成果物も、本人たちの成長もレベルが上がっていきますが、逆に、そうでもないといい成果は生まれないわけです。学生がこの鳥瞰絵図をみてどう反応するか、「うわー、おもしろそー!」となるか、「へー。で何やればいいんですか?」となるか、学生をこの鳥瞰絵図と対面させるまで、正直、心配でした。

その年の3年生は、なぜか「超」がつくほど元気いっぱいで、仲が良くそれまでの活動でも見事なチームワークをみせてくれていました。でも、今の若い人にとって「鳥瞰図」って面白く感じられるのか、「姫路城下」ってどうなのだろう。私が面白い!とおもうものも、学生に聞いてみると、そうでもない。ということがこれまでたびたびあったので、今回も不安はぬぐい切れなかったのです。

ゼミ生、鳥瞰絵図と対面する。

7月13日、事前に最低限の説明をしたうえで、学生たちを播磨学研究所のオフィスに連れていき、志賀先生、そして実物の鳥瞰絵図を見せたときの写真がこちら。

やや演出の入った写真ではありますが、みな、目を輝かせながら、「すごーい!」「こっまかーい!」「きゃー!」「あ、うちのアパート発見。」「かわいいー!」など、歓声をあげていました。どうやらファーストコンタクトは成功したようでした。姫路や鳥瞰図についてほとんど知らない、若い世代にも一瞬でこれだけのリアクションを引き起こさせるとは、青山さんの画力、恐るべし!その後、志賀先生から説明をうけ、プロジェクトがスタートすることになりました。

 

鳥瞰絵図を広く知ってもらうための「アイディア」は?

プロジェクトの最初のステップは、条件設定と基本アイディアの構想です。この作品を多くの人に知ってもらい、自分たちが感じたのと同じような感動を味わってもらうためにどうしたらよいか。この時点ではこの鳥瞰絵図の商品化のめどは立っておらず、また、原寸とされるA0サイズの実物が数点あるだけ。これを前提に自分たちで何ができるか、ブレインストーミングを行いました。

「ウェブサイトをつくる」「美術館と連携して展示する」「駅前広場に展示する」「Tシャツにプリントして販売する」などなど、現実的、非現実的なものまで、いろいろ出しあっていく中で、今となってはもはや誰が最初に言ったのか分からなくなっているのですが、「大きく印刷して、その上を歩く」というアイディアが飛び出してきたのです。今回のプロジェクトの支柱となるアイディアの誕生の瞬間です。

このアイディアのよいところは、鳥瞰絵図の上を歩くというレア体験ができるということのみならず、一般の人にも興味を持ってもらえそうなシンプルなものであること、そして、これが重要なのですが、環境人間学部のキャンパスにある講堂という施設を活用すれば会場費0円で実施でき、学内の大型プリンターを使えば制作費もそれほどかからないという点でした。インパクトもあり、実現可能。これほどよいアイディアはありません。

ゼミ生と私はこれで行こう!と意思が固まり、善は急げとばかりに、その足で講堂にいってみることにしました。大型プリンターで印刷できる最大サイズのB0で、36枚に分割して印刷した場合の大きさを計算して巨大絵図の寸法を割り出し、四方の頂点に学生が立った写真がこちら。

後日、学生がスマホのアプリで合成したものがこちら。

これはいける!

志賀先生、青山さんにこのアイディアを提案すべく、プロジェクト企画書を作成することになりました。この巨大な鳥瞰絵図の上を歩くというプログラムをメインメニューとするイベントを企画する。サブメニュー(志賀先生、青山さんのトークや紹介映像の放映、制作体験コーナー等)も含め、ターゲットやその特性、それぞれのプログラムの意義や効果、スケジュール、収支計画などを整理しました。

絵図を足で踏みつけていいの?

しかし、一つ重要な懸念が残りました。果たして芸術作品の上を歩くというのはOKなのか。作者である青山さんがものすごい時間をかけ、丁寧に、丁寧につくりあげた苦労の結晶なのであり、それを足で踏みつけることになってよいのか。メンバー全員が凍り付いてしまいました。

さらに、問題なのが鳥瞰絵図の保護。印刷するポスター用紙の上を多くの人が靴下で歩けば、汗の成分などでどうしても色落ちするだろうし、スリッパで歩けば必ず汚れてしまう。人が歩くたびにどんどん汚れていくというのは主催者として避けたかったし、歩く人だって気持ちよいはずはありません。この問題をどうクリアするか。その時点では妙案は浮かびませんでした。

とりあえず、この問題は保留、つまり「何とかなる!」と思い込んで、「姫路城下巨大鳥瞰絵図展」とネーミングした企画を志賀先生と青山さん、そして、この版権を管理する出版社の世良典子さんにプレゼンしたところ、「非常に面白い案」「上を歩くということも問題ない」という大変ありがたいコメントをいただきました。ゼミ生にも思わず笑顔がこぼれました。そして、問題の絵図の保護については今後検討していくということで、いよいよプロジェクトは本格始動することになりました。

イベントの具体化、役割分担、立ちはだかる課題。

お三方の承諾をうけて、開催日を2021年11月12、13日、会場を兵庫県立大学姫路環境人間キャンパスの講堂に決定。ゼミの学生たちは、それぞれ役割分担をきめて、イベントの具体化と準備を進めることになりました。たとえば、役割には、以下のようなものがありました。

・企画のロゴの制作
・PRサイトの制作・管理
・SNS(Instagram)の開設・運営
・案内チラシの作成と配布
・会場のレイアウトデザイン
・会場に展示する案内パネルの制作
・会場で放映する映像の制作
・制作体験コーナーの企画と準備
・来場者アンケートの作成

学生たちはそれぞれの希望やもっている特技で割り振っていったようです。9月以降、それぞれの役割をしっかりと進めつつ、全員で状況を共有しながら、プロジェクトを進めていきました。

他方、私の役割は何だったかというと、鳥瞰絵図の拡大印刷、絵図の保護対策、そして、コロナ対策でした。ここでは絵図の保護対策について少し紹介したいと思います。

先にも書いたように、巨大な鳥瞰絵図の上を歩くという、最大の目玉の成立条件になっているのが保護対策でした。「歩けるエリアや時間を決める」「専用のスリッパに履き替えてもらう」「薬剤でコーティングする」など、あれこれ考えましたが、どれもいまいち。結局、最もシンプルな透明ビニールシートを被せるという方法でいくしかない決断しました。

しかし、では、どれくらいの厚さ、重さ、材質がいいのか、これだけ大きい面積を覆うとすればコストはどれほどなのか、頭を抱えました。厚み1㎜といってもそれがどれほどなのかイメージがつかめません。近くのコーナンにいってテーブルクロスとして使う透明ビニールシートを実際に触って確認しました。しかし、1mmがこの程度、0.6mmがこの程度、というのが分かったとして、では、どのくらいの厚さなら、その上を歩いてもめくれたり、膨らんだりしないのか。正直、分かりませんでした。当然、薄い方が値段も安く、分厚くなると高くなります。念のため厚目の設定で費用を計算したところびっくりの値段に。。。

今度は天下のアマゾンに場所を移して、透明シートを探しましたが、どれもサイズが小さく、今回の企画のニーズを満たすものは見つかりません。どうした!アマゾン!

11月に入り、焦りが募る中、藁をもつかむ思いで探索の場所を楽天市場にうつし、中をぐるぐる探していた時に偶然に目に飛び込んできたのが以下でした。

 

これだ!今回の面積をほぼカバーできるし、予算にも収まりそう。でもやっぱり実際に触ってみないと不安だったので実店舗がどこにあるかを調べたらなんと大阪市内。自宅からなら車で1時間程度でいける。電話してみると在庫もあるとのこと。すぐに上村シートという、淀川沿いにあるその店舗に赴き、親切な店員さんとも相談して購入を決定。長さ185cmメートル、重さ36㎏もあるロールを車に積んだところの写真がこちらです。これで当初から懸念していた絵図の保護の問題は完全解決するのでした。

 

多くの人に来てもらうために

話を戻して、ゼミの学生たちは、イベントの告知に力をいれていました。まずは、SNS。プロジェクトの進行の様子をシェアしていきました。次に、ウェブサイトで基本情報を掲載していきました。そして、チラシの作成。2000部印刷し、近隣の小学校に出向いて生徒さんに配布してもらうなどしました。

しかし、このようなウェブとチラシだけでは限界があります。そこで重要になってくるのがマスメディアに記事として取り上げてもらうこと。知り合いの神戸新聞の記者さんにこの話をしたところ興味をもってくださったので、イベントの10日前に絵図の一部を仮設置し、その様子を取材してもらうようセッティングしました。記者さんもそのあたりを配慮してくださったのか、開催告知として非常によいタイミングの開催1週間前の11月6日に掲載いただきました。開催当日の来場者アンケートでこの記事をみて本イベントを知ったという人は非常に多く、神戸新聞の強さを改めて実感しました(なお開催初日の夕刊にも掲載いただきました)。

記事のリンク
神戸新聞:姫路の城下町の大きさ体感 県立大生ら企画、巨大鳥瞰図を展示

巨大鳥瞰絵図、現る。

絵図の印刷も36枚すべて完了、透明シートも入手。他の準備もほぼ完了。いよいよ会場設営をすることになりました。

36枚並べおえ、絵図全体を見渡して改めて感じたのは、青山さんの絵図がこれだけ大きく拡大しても、粗がでることなく、しっかりと細部まできれいに再現されていることでした。それだけ原図が精密ということですね。

そして、やはりこれだけ大きく拡大されるとA0サイズで見るのとは全く異なる体験になるということです。まずは縦7.5m横6.2mの面積が生み出す迫力がすさまじいことは言うまでもありません。また、細部を見る際にもA0サイズではどうしても目を凝らしてみなければならないわけですが、この巨大版では自然と細かいものが目に入ってくるために、非常に理解しやすく、いろいろな気づきを得やすいということです。

手ごたえを感じた私たちは自信をもって当日に臨むことになりました。

鳥瞰絵図、そして姫路を上空?から堪能する。

12、13日の2日間、延べ280人の方にご来場いただきました。コロナ対策として、検温、消毒、換気に加え、念のため連絡先情報の記載もお願いしましたが、全ての方が快く応じてくだいました。感謝!

来場した方々はまずは絵図の上を歩いて、それを堪能した後、青山さんと志賀先生のトークにも熱心に耳を傾けていました。さらに今回の企画でよかったのは制作体験コーナーでした。会場の一角に机を配置して、子どもむけの塗り絵バージョンと、青山さん指導による姫路駅前山陽百貨店の描画バージョンがあり、いずれもとても人気でした。

志賀先生、青山さんには2日間フルで参加いただき、講演や体験の指導をしていただきました。ほとんどの参加者がとても満足されていたことは、来場者アンケートにはっきり表れていました。きっと鳥瞰絵図のファンになってくれたことでしょう。私たちやゼミ生が青山さんの鳥瞰絵図をみて得た感動を、こんなに多くの人とシェアすることができて、私たちとしてもうれしい限りです。

神戸新聞:姫路の城下町「空から散策」 絵師・青山さんの原本を巨大鳥瞰図に

まとめ

このように、イベントは盛況にうちに終了したのですが、一つだけ後日談を紹介します。実はその後、とある団体から、「このイベントのことを新聞でみて大変興味をもった。自分たちが主催するイベントでも展示させてもらいたい」という依頼があり、現在それにむけて準備しています。結構、大きな団体で、青山さんの作品がさらに多くの人の目に触れる機会がうまれることになるので、大変楽しみにしているところです。

さて、志賀先生が企画、青山さんが制作、そして、私たちが普及、この三者が連携して進めてきた一連のプロセスを紹介してきましたが、まとめとして、改めて感じたことを3点ほどお伝えしたいと思います。

まず、今回のプロジェクトの成功要因は、「企画」「制作」「普及」それぞれのクリエイティビティが大いに発揮されたことではないかと思います。クリエイティビティというと制作の面のみに目が行きがちで、それはもちろん重要なのですが、今回の場合、そもそもこういう絵図を作ろうと企画したこと自体が極めて秀逸でした。そして、普及における「巨大にして上を歩く」というアイディアも手前味噌ですが、素晴らしかった。単純といえば単純なアイディアですが、だからこそ強い力を発揮したのです。

もう一つは、企画、制作、普及の連携です。連携すべきなのは当然ですが、それぞれの目指すところは実はズレやすいのです。「企画」する側は非常に大きな視野で考えるために、要求が高くなりがちです。「制作」は誰にも真似できないセンスと技術で膨大な時間をかけて創り上げるので、自分のやり方に頑なになりがちです。「普及」は一般の人、来場者目線で考えるので、逆に企画者や制作者の想いをくみ取ることに失敗しがちです。しかし、今回の場合は相互の尊敬と信頼があったからこそ、うまくいったと言えます。特に、「巨大にして上を歩く」という、「作品を踏みつける」ことになるアイディアを志賀先生、青山さんが面白がって、許容してくれたことはそれを証明するものでしょう。

最後は地域の文化・アートの振興における、公立大学の役割です。地域には様々な文化・アート作品や営みがあります。しかし、それらは大都市中心の情報空間の地場の中で見過ごされがちです。地方の公立大学はこのような磁場の中で身近な地域にある価値のある人や作品、営みに目を向けさせることに取り組むべきだし、その力が確かにあると今回の取り組みを通して感じました。大学が持つ公共性や教員の専門性、そして学生の若い力などを活かして、地域の文化を、いわばアンプ(増幅器)のように大きく分かりやすく変換し、社会に発信し、広めていく。こういう役割を大学はもっと果たしていくことができるのではないでしょうか。

謝辞
姫路城下巨大鳥瞰絵図展の開催にあたっては、多くの方々にご支援いただきました。この場を借りて深くお礼申し上げます。

 

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