かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2024.11.05

【学生企画】MBTI性格診断って本当に信じられるの?ゼミの指導教員である心理学教授に聞いてみた!

流行りのMBTI性格診断

こんにちは!兵庫県立大学環境人間学部人間形成系で心理学について学んでいる3回生です!みなさんはMBTI性格診断というものを知っていますか?最近、芸能人やYouTuber、アイドルまでもがこのMBTI性格診断をやっており、非常によく聞く言葉ですよね。私も友人に誘われてやってみたところ、ENTP-T(討論者)でした!

これだけ流行りに流行っているのはMBTI性格診断に信憑性があるからではないかと思いました。自己紹介で使う人もいるぐらい、結果を示せば自分を分かってもらえると認識されていますよね。しかし、専門家に診断してもらったわけでもなく、ただのネット上の性格診断なのに本当に信じられるものなのか疑問に思ったので、今回は私が現在学んでいるゼミの先生である発達心理学が専門の保坂裕子先生にお話を伺いました!

MBTIってなに?

そもそもMBTI性格診断とは、NERIS Analytics Limitedというイギリスのリサーチサービス会社により作成された性格テストです。

また、MBTI性格診断と呼ばれていますが、正式には少々異なるようで、元々あったマイヤーズ・ブリッグス理論(MBTI理論)にユングの理論とBIG5性格特性という心理学上で用いられる性格テストを融合させ、統計学に基づいて作成された「16パーソナリティ」という診断のことです。ですが、今回は分かりやすいようにMBTI診断と呼ぶことにします。サイトによると、MBTI診断は全世界で約4000万人が使っているそうですが、兵庫県立大学ではどうなのでしょうか?

兵庫県立大学環境人間学部のMBTI

というわけで、兵庫県立大学の環境人間学部3回生60人にGoogleフォームを用いてアンケート調査を行いました。なんと、その内59人がやったことがあると回答しました!結果の内訳は以下の通りです。

回答してくれた方の中での傾向にはなりますが、様々なタイプがいることが分かりますね。その中でも外交官タイプ[_NF_]が多いですね!このタイプは協力的で想像力に富んでおり、調和を重視するそうです!環境人間学部には他者の気持ちを思いやれる温かい人が多いのかも・・・?
また、診断を行った理由も伺ったところ、結果は以下のようになりました!自由記述で回答の上、内容の系統を筆者がまとめてグラフを作成しました。

 

一番多かったのは「友人・家族の影響」と答えた人で22人です。これに「流行っていたから」も含めて、周囲の影響によるとされる人の割合は全体の55.9%を占め、みんなが周りに影響されて診断をしたことが分かります。また、自己分析のためにやった人も多いみたいです。

でもせっかくみんなこれだけやっているのに本当にMBTI診断は信用できるのでしょうか?テストを制作したNERIS Analytics Limitedは”we were able to make it highly reliable and accurate”と高い信頼性があると述べていますが、実際はどうなのでしょうか?というわけで、私が所属するゼミの指導をしていて、発達心理学が専門の保坂裕子先生にインタビューしに行ってきました!

MBTI診断は信用できるのか

筆者:保坂先生、今日はよろしくお願いします!早速ですが、MBTI診断というものが最近流行っているのですが知っていますか?

先生:はい、つい最近ゼミ生に教えてもらいました。それで先生のタイプは何ですか?と3週間くらい聞かれ続けたのでやりましたよ。INTP-T(論理学者)でした。

筆者:そうなんですね!なんかぽいです(笑)。では、このMBTI診断は、ずばり先生は信用できると思いますか?

先生:信用という点で言うと、このMBTI診断の心理統計学上の信頼性には疑念を持ってますね。というのも、心理統計上の検証が十分ではないんじゃないかなと思うからです。MBTI診断は、これまで自分が所属している学会や読んだ論文などで見聞きしたことがないし、MBTI診断の信頼性や妥当性を検証した研究結果などを見たことがないんです。例えば心理学の研究で用いられて、カウンセリングの場面などで使われるBIG5性格特性などの心理テストは自分が関わる学会などで聞いたことがあるし、これまでに何度も検証されてきて、その実績が積み上げられているから信頼できると思ってます。なのでMBTI診断っていうのは、実際の臨床で使われているのを切り取って面白く使っているポピュラー心理学というものなんじゃないかな。MBTI診断はまだこの次元を超えていないと思います。あと実際に回答してみて、その回答に揺らぎが見られたからです。揺らぎっていうのは、質問に答えるときに、その時々によって回答が変わることを言うんです。やっていて「これ、気分によって答え変わるんじゃない・・・?」みたいな質問ありませんでしたか?

筆者:確かにありましたね・・・(笑)。迷う質問も多かったです。

先生:ですよね。私もすごく迷ってしまって。30分以上かかったんです!

筆者:30分!?それはめっちゃかかりましたね・・・。

先生:もう大変でした(笑)。でもそれはカウンセリングの現場で用いられる場合ではあってはならないことなんです。本来そのようなテストというものはどのような状況でも回答に揺らぎがあってはならないものだからです。これはつまり、このテスト自体に信頼性や妥当性がないことを示すんです。それに心理テストとは本来は何個も組み合わされて、あくまでその人の性格を知るためのヒントとして扱われるものなんです。なので、そういったものと、このMBTI診断は違うという認識を持っています。だから、MBTI診断は心理統計上の信頼性や妥当性に則られていないという点で、信頼はできないと思っています。

信頼できないのになぜ流行っているのか

筆者:ありがとうございます!では信頼もできないのになぜこれほど流行っているのでしょうか。

先生:うーん、みんな自分に関心があるのかなとは思います。そもそも昔から、骨相学やクレッチマーの類型論、BIG5特性論など、心理テストが手を替え品を替え存在し続けてるのを見ても、人っていうのはずっと自分に関心があるのかなと。あとは自分を分かって欲しいのに加えて、相手を分かりたいのもあるのかなぁ。まあでも、ここまで流行るのは自分探しの一環として自分を知りたいと思っているからという面はありそうですね。

性格診断で自分を知れるのか

筆者:なるほど・・・。では、性格診断をすれば本当に自分を知ることはできるのでしょうか?

先生:私はそれをすることで自分の性格が分かるとは思わないし、分かってどうするんだと思いますね。というのも、予言の自己成就というものがあって、診断結果が予言となり、その結果を自分で再現してしまうことがあるんです。だからMBTIの結果が当たっているというより、診断されて、自分はこうなんだと思うことで、そういうふうに行動しちゃって結果的に差が生まれちゃってるかもしれないんです。血液型診断とかも実は関係ないって言われているの知ってる?

筆者:はい!知ってます。血液型診断って結構有名なのに関係なかったんですよね。驚きました。

先生:そうなんです。なので血液型診断も、その人を決定づけるなにかが体内や血液に流れているのではなく、周りの言説によるんです。それがその人の性格なのではなく、それが社会でどう言われているかによって、その人も自分はそういう人間なのだと思ってしまうんです。なので、私個人としては、信じればそうなるし、信じなければそうならないという感覚ですね。

筆者:じゃあ先生は自分の性格には興味がないんですか?

先生:そういうわけではないですね。自分の性格に興味はあるけど、何かに測られてそういったテストでカテゴリー化されることには興味がないんです。私をすごく知っている人に言われたらそうなのかなと思うけど、知らない人に言われたら、ましてやちょっとやっただけのテストに言われたぐらいじゃ、石ころを投げられたかなってぐらいで全然響かないです。だから、性格というのはテストで分かることではないと思います。

筆者:そうなんですね。では先生はどうやったら自分の性格を知れると思いますか?

先生:自分の性格を知るということは、テストの結果を用いて行われるコミュニケーションを通してなされるものだと思います。なので、診断をすれば自分を知れるというより、それをどう捉えるかが大事で、それが影響すると思います。だから、診断自体は単にコミュニケーションのツールとして捉えて、楽しむのが一番だと思いますよ。

 

保坂先生、ありがとうございました!なるほど、先生にとっては性格診断テストの結果はそのまま信頼することはできないものなのですね。確かに、10分やっただけのテストで自分の全てが現れるわけがありませんから納得です。でも、自らのアイデンティティを求め、自分探しの真っ只中にいる私たちには、ここまでの境地に辿り着けるのかと言われれば難しいかも・・・。これまで社会で様々な経験を積んでこられた先生に比べて、私たちは診断結果には多少なりとも一喜一憂してしまうことでしょう。なので、いつか先生が仰った心境になれたらいいなと思うぐらいでちょうどいいかもしれませんね。

MBTIは自分の一つの可能性!

最初はMBTI診断が信頼できるのかを調べようと対談を行いましたが、その結果、信頼性どうこうより、自分探しというものは、決してお手軽なものではなく、何度も周囲の人と交わり、自分とは何なのかを考え続けなければできないのだと知ることができました。
でもこれはあくまで成熟した大人である先生だからこその考え方でもあります。先生の言う境地に今すぐ感受性豊かで周囲に敏感な私たちが行くことは難しいでしょう。なので私たちはそれよりも、診断結果を受け止めつつ、でも「こういう自分もあるかもしれない」と、あくまで自分の一面に過ぎないのだと捉えるようにすることが大切なのだと思いました。そして、結果に囚われて自分を型にはめ込むのではなく、自分という存在の多面性を追求することで自分を知ることができるのかもしれませんね!

なので私もただ一つのアイデンティティにこだわるのではなく、日々新発見する自分を怖がらずに受け入れ、自分という結晶をもっと綺麗に磨いていこうと思います!

 

(本記事は「現代メディア演習」の一環で作成されたものです)

参考文献

16personalities「Our Framework」(閲覧日:2024年7月1日)
16personalities「性格タイプ」(閲覧日:2024年7月1日)

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