フリーランス管理栄養士(2018年卒)/選手たちのために、スポーツ栄養学の未来のために。 学びはまだ、終わらない。
スポーツ選手たちへの栄養管理と食事提供で、より良いパフォーマンスに導く。
私は、フリーランスの管理栄養士として、さまざまなスポーツチームやアスリートの栄養管理や食事提供をしています。担当しているスポーツは幅広く、サッカーやバスケットボールなどのプロスポーツ選手やトライアスロン、ラグビー、陸上短距離・長距離選手などまでさまざま。高校生年代のサッカーチームも定期的にサポートしています。育成期、成長期の子どもたちは食の大切さをまだあまり理解していないので、運動前に食べるといいものや、遠征先に持っていくといい食べ物など、食事以外に食べる「補食」についてもアドバイスを行い、スポーツ選手が食事に取り組む意義を説明しています。
一人ひとりに最適な提案を行うために、練習内容から考え方まで把握。
どのようなスポーツでも、栄養の基礎的なところは同じですが、練習内容や練習時間、試合時間の長さなどで必要な栄養素や量も変わってきますので、アドバイスをする上でもそのスポーツのことを知っておくことは大切です。そして、選手の性格や考え方などを把握するのも大事なこと。選手一人ひとりに合わせた提案を行うために、パーソナルな部分にもしっかりと目を向けるようにしています。
スポーツ現場の管理栄養士になるために、立命館大学から編入学。
私が管理栄養士を目指したのは、立命館大学スポーツ健康科学部に在学していた頃。当時は漠然とスポーツに携わる職業に就きたいと思っていましたが、2年次にスポーツ栄養学を履修し、栄養がスポーツに与える影響の大きさを知りました。管理栄養士になるためには、4年制の管理栄養士養成課程での学びが必須ですが、1年でも短い期間で取得したいと思い、関西圏で編入先を探しました。在籍される先生の研究内容を調べていたところ、私が興味のあった栄養教育や栄養生理学を永井成美先生が研究されており、また、私が立命館大学の卒業論文で永井先生の論文を引用していたことも重なり、県立大を希望。2年次に編入することができました。
永井先生には、本当に丁寧にご指導いただきました。栄養教育における効果的な伝え方、高齢者を対象とした調査の際の声かけや測定方法なども非常に勉強になりました。年下の学生の皆さんと一緒に給食を作ったり、実験したりするのは、はじめは大変なこともありましたが、いろんな人と一つのことに取り組む体験は、今、管理栄養士として給食管理や研究を行う際に生かされています。
3年間、積極的に学びのチャンスをつかんだ。
大学卒業後、さらに3年かけて学ぶのですから、スポーツ現場の栄養士になる目標は、絶対に実現したい! そう思っていたので、学びのチャンスがあれば学外のプログラムにも積極的に参加しました。カナダのナショナルチームやシルク・ドゥ・ソレイユの食事や栄養管理を現地で学ぶ海外研修にも、夏季休暇を利用して参加。4年生次には、プロ野球チームの選手寮で朝食作りのアルバイトもしました。自分で自分の仕事を調整していくことが自分の性格に合っていると気づいたので、就職活動を行わず、フリーの管理栄養士になることを決意し今に至ります。大学の学びと並行し、とにかくいろんなところに出向いて学び、そこでいろんな出会いがあったことがさまざまなご縁となり今につながっています。
スポーツ現場の栄養士として、感じていること。
スポーツ栄養学自体が、比較的新しい学問ということもあるのですが、管理栄養士として経験を積めば積むほど、まだまだ知らないことがたくさんあると感じます。日本語の資料だけでは得られる情報に限りがあるので、海外の論文も読んでいます。また、コロナ禍にはオンラインプログラムを受講し、IOC Diploma in Sports Nutrition国際オリンピック委員会スポーツ栄養学のディプロマを取得しました。
ネット上にはたくさんの情報が溢れていますが、その情報が正しいのかどうか、選手自身も、選手をサポートする人も、監督も判断できません。そうした中で、正しい情報や必要な情報を食事やサプリメントなどに落とし込んで、選手や現場の人たちに伝えていくことも、私たち管理栄養士の大事な役目の一つです。
現場で感じた疑問を軸に、大学院で研究中。
現在私は、管理栄養士として現場の仕事を続けながら、立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科博士後期課程で、炭水化物や脂質など、エネルギー源となる栄養素について研究しています。
試合前やレース前のスポーツ選手は、炭水化物をたくさん摂ることを推奨されています。しかし、身近でサポートしてみて、「選手によって適切だと思われる炭水化物の量が大きく違うような気がするな」と疑問を抱いていました。なぜなら、たくさん食べないとパワーが出ない選手や、膨大なボリュームを食べ切れる選手もいますが、その一方で、食べきれなくてもパフォーマンスはちゃんと発揮できている選手や逆に体重が増えすぎる選手もいるからです。今、正しいとされているものは、本当にそうなのか。パフォーマンスや体づくりの違いはどこから生じているのかなど、現場で感じた疑問を軸に研究し、今、論文作成に取り組んでいるところです。
食事は本来、楽しく、快適であるものです。選手たちが良いパフォーマンスを発揮できるだけでなく、心身ともに良い状態で日々を過ごせるような食事や栄養補給の提案につながれば、そして、自分の研究や論文が「スポーツ栄養」という学問がさらに発展していく一助になればと願っています。
学びや出会いを広げれば、求めている未来につながる。
食を勉強することは、必ず誰かのためになります。何しろ、自分自身が心身共に健康でいられることが、食を学ぶいちばんいいところだと思います。
スポーツや食を通じて、社会の役に立ちたいと思っている人は、学生のうちからいろんな人と交流してみてください。子どもたちやおじいちゃんおばあちゃんなどなど、いろんな人がいることを知り、それを受け入れていく姿勢は、さまざまな分野に広がるスポーツ選手のサポートに活かせます。人とたくさん交流することは、必ずあなたの未来に繋がっていきます。