2021.04.10 更新

人と寄り添いながら、住まいを、店を、まちをつくる。

環境人間学部で学んだ先輩たちは今、大学での学びや経験をどのように生かしているのか。そして、「これからの時代の暮らし」について、どのように考えているのか。今回は、滋賀県高島市で住宅プランナーとして活動する原智絵さんに、オンライン取材をさせていただきました。 聞き手:森 千春(WORDWORK)

SAWAMURA 住宅プランナー 原 智絵さん

(プロフィール)

徳島県出身。2012年兵庫県立大学 環境人間学部 環境デザインコースに入学。大学在学中は安枝英俊ゼミで「住宅・交流施設の建築計画」などについて研究を深めながら、弓道部にも所属(3段の腕前)。2016年卒業後、滋賀県高島市に本社をおく「SAWAMURA」に入社。

 

お客様からの信頼に応えるには、「スピード感」が大事。

:今日はよろしくお願いします。さっそくですが、現在の原さんのお仕事について教えてください。

原さん:滋賀県高島市に本社がある「株式会社澤村(SAWAMURA)」という建築会社で、住宅プランナーとして住宅や店舗の設計を担当していて、滋賀はもちろん、京都、福井の案件にも対応しています。うちの会社には「住宅営業」という職をおいてないので、住宅プランナーの私たちが直接お客様と会って、ヒアリングを重ねたうえで設計・施工にすすめています。

 

:仕事の進めた方はどんな感じですか?

原さん:お客様から相談に関するお問い合わせがあったら、まず打ち合わせに行って、土地計画からいろいろな話を進めていきます。大きい案件の時は先輩と一緒にいったりします。

SAWAMURAは、施工の品質に重きをおいている会社で、現場での打ち合わせを大事にしています。滋賀は琵琶湖だけでなく、きれいな山も多いので、自然がしっかり見えるようにしようとか、図面だけでわからないことの検討やお客様とのイメージのすり合わせを、その場で行うようにしています。

:原さんが、お仕事でとくに気をつけていること、意識していることってありますか。

原さん:安心して任せてもらいたいので、なんでもすぐに応えられるように、日頃から勉強したりして「スピード感」を意識しています。

:どんなときにやりがいを感じますか?

原さん:「SAWAMURAさんを信頼しているのはもちろんだけど、原さんだったからお願いしたんですよ」と言葉をかけてもらった時はうれしかったです。うちの会社では年に1回、OB施主様にご挨拶にうかがっているんですが、顔を見て喜んでもらえるのもうれしいですね。

:今までどんな案件を、担当されてきたんですか?

原さん:最初は先輩の補助を経験させてもらって、一人で任せてもらえるようになってからは戸建住宅を15軒くらい担当しています。ほかにもラーメン屋さんなどの店舗も設計しました。

 

:画面越しですが、今、原さんがいらっしゃるオフィスもカッコいいですね。

原さん:あ、ありがとうございます(笑)。ここは、会社の離れを利用した打ち合わせスペースで、2020年に作った場所なんですが、実はここも、私が設計を担当させてもらいました。

:すごい! ちょっと画面でグルっと見せてもらっていいですか。木がいっぱい使われていますし、部屋の「内側」と「外側」のつながりみたいなのを感じますね。

 

原さん:そうなんです。『人が集まれる場所』をイメージして、雑貨屋さんを併設した打ち合わせスペースを作りました。SAWAMURAは、創業して70年を数える昔ながらの工務店なので、地域からの信頼がすごく厚いんですね。昔ながらのつながりとか、建築の昔ながらの工法とかも大切にしながら、「SAWAMURAはこういうデザインもできるんですよ」という新しさをアピールできればいいなと。

あと、うちの会社で、地元のクラフト作家さんたちを呼んでマルシェをしたりするのですが、普段は打ち合わせスペースとして使っているところを、イベントのときは開放して利用できればといいなと思ったんです。このスペースで、SAWAMURAに対して「おしゃれだけど敷居は低く」というイメージを感じでもらえればと。

:実際に新しい依頼もあったんですか?

原さん:ありました、ありました!

地元に寄り添い続ける、社の姿勢に共感。

:原さんは徳島のご出身ですが、滋賀の会社に就職しようと思ったのは?

原さん:例えば地下鉄とか、都会の、なんというか「無機質」な感じが苦手で(笑)。就職活動中にSAWAMURAという会社を知りまして、地元への貢献とか、まちとのかかわりについてすごく考えている会社で、利益も大事ですが、お客様に寄り添う感じが温かくていいなと思ったんです。

:その「寄り添う温かさ」というのは、入社されてからも感じられますか。

原さん:そうですね。お客様と直接お話をするので、実際に「温かい会社」というような言葉をもらったりもしています。

:兵庫県立大学にも、住宅プランナーを目指して入学したんですか?

原さん:県立大に入った頃は、がっつり建築というより、どちらかというとインテリアとか、住環境のほうに興味があったんです。

:どんなところに興味があったのですか?

原さん:心理学とか、地域のこととか、人と寄り添うようなことが学べるのがいいなと。ところが、これは今でも覚えてるんですが。基礎ゼミの担当教員だった三田村哲哉先生から、初日の授業で「インテリアを学びたいなら、建築もしっかり学ばないと」と釘をさされまして(笑)。でも、それから建築の面白さを感じるようになりました。

:なるほど。ほかにも印象的な勉強とか、これはがんばったなという思い出は?

原さん:2年生の後半から、美術館などの公共施設をデザインする授業があって、実際にコンペにも参加できたんです。人の流れを考えたり、視点を変えたりしながら設計していくと、自分でも思いもよらない発想が見えてくるんです。自分から出てきたアイデアをみて、「自分の経験が生かせていける!」「いいのを思いついてくれた自分!」と(笑)。今でも、そういう瞬間があって、それが、この仕事を好きでい続けられる理由にもなっていると思います。

言われたことだけじゃなく、絶対にびっくりさせよう。

:仕事と勉強の差はあっても、「今までの経験や学びが、アイデアとしてカチッとハマる瞬間」の心地よさは、変わらないんですね。

原さん:そうですね。それと、これは今もあるのかわかりませんが、『ひめ縁』のメンバーとして、姫路の町家で週末だけ開店する学生カフェ「しょうあん」の手伝いもしていました。レシピを考える班、のれんのデザインを考える班などに分かれて、私はロゴデザインを考える班で。同じ学部でも食環境栄養課程コースの子や教職を選択している子と、いろんな意見を出し合ったりして、これも「建築といってもいろんな関わりがあるんだな」と思えた経験でした。

(ひめ縁での活動時の写真)

 

原さん:あと、今につながっている経験でいうと、大学のオープンキャンパスのお手伝いですね。

高校生を対象にした取り組みだったのですが、後から先生に「みんなの人間力の高さにびっくりした!」という言葉をかけられてうれしかったですね。人と関わる仕事に就きたいなと思えた最初のきっかけになりました。

:「人間力」ですか。

原さん:そうですね、今でもその言葉を日々考えながら仕事をしています。家や店舗を建てられるとき、安さで決める人もいますけど、「ここの会社は、いい提案をしてくれるか、寄り添って考えてくれるか」を見極めて決めてくれる人もいるし、「前によくしてもらったから」といって選んでくれる人もいる。だから、「言われたことだけをするようなことはしない。絶対びっくりさせよう!」という気持ちでやっています。

:それだけ原さんに響く言葉だったんですね。ところで、昨今のコロナ禍の影響は、「住まい」や店舗のオーダーにも変化を起こしていますか?

原さん:家で過ごす時間が増えたことで、「書斎」に関するオーダーが増えたり、住環境を快適に、もっと楽しくするためのオーダーが増えた気がします。

:そのリクエストに、原さんはどう応えているんですか?

原さん:「こうすると、もっと家の時間が楽しくなります!」という提案をしています。

壁面をボルダリングにしたり、ワインバーをつくったり、少し攻めた提案でもOKをいただいています。今までは「何でもいいよ」とお任せの施主様もいらっしゃいましたが、最近は細かな寸法の話など、自分の住まいについて細部までこだわりをもった施主様がほとんどなので、私自身もいつもとても勉強させていただいています。

実務的には、オンラインでの打ち合わせが多くなりましたが、直接現地に行かないとわからない場合は現地に行っています。作るものは建物でも、やはり「人」がメインなので、表情や感情が、モニターでしかわからないのが不安でしたが、オンラインでもいまのところ支障はありません。

これからのキーワードは「三方よし」!?

:「住まいを作る」という原さんの仕事は、人の暮らしにいちばん近いものを作る仕事だと思うのですが、これからの「暮らし」について、こうであればいいなと思う理想はありますか。

原さん:人とのつながりは、これからもっと重要になると思います。

私が勤めるSAWAMURAは、滋賀県の高島市というところにあるんですが、比較的Uターン者の多い町でもあるんですね。そこで、SAWAMURAでは「きっかけ創造大学」といって、滋賀を盛り上げていくためになにかしら取り組まれている方をゲストに呼んで、高島市をよくするためのイベントやフィールドワークをしています。これまでに、他府県でまちづくりに取り組まれている方や、地方自治体や地方の企業と協同で商品開発等をされているアパレルブランドの「ビームス」の方にもゲストとして来ていただきました。その方達と行政機関の人、学生、NPOの人らが実際に高島のまちを一緒に歩いて「ここに店舗があると、こんな人が集まるね」とか「こういう働き方ができそうだね」とか自由に話して、今後、高島市への提案も視野に入れています。

:なかなかできない取り組みですね。

原さん:こういったNPO的な動きは、会社の直接的な利益にはなりませんが、地元の人に「あ、うちの町にはこういう魅力があるんだ」と知ってもらえるきっかけになるし、Uターンを考えている人にも、京都まで電車で45分の距離の高島市で、豊かに暮らせるとアピールできるんです。

私たちもそこで得た情報や経験、視点は、家を建てるときにも生かせるので、自信を持ってプレゼンテーションできたりするんです。

:しっかりまちづくりに還元できているんですね。原さんも高島に住んでいらっしゃるんですか?

原さん:はい。

:どんな人が多いと感じますか?

原さん:高島市は、冬に雪が積もる環境なんですけど、朝の雪かきを近所のみんなでやるんですね。寒いエリアだから、助け合うというか、「三方よし」の精神が強いエリアだなと思います。

※三方よし:「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の3つの「良し」のこと。かつて、近江商人の心得とされたもので、「売り手と買い手がともに満足し、社会貢献もできるのが良い商売である」という意味合いを持つ。

 

:「三方よし」って本当にいい言葉。ある意味、とってもイマ的な言葉かもしれないですよね。では、ご実家とも、学生時代に過ごした兵庫とも違うまちですが、寂しさは感じないと。

原さん:徳島も好きですが、こちらに家族もできましたし、高島も好きなので、このまま暮らし続けると思います。

:今回、大学時代をふりかえってみられて、いかがでしたか。

原さん:大学の先生やゼミ生とか、課題の提出期限が迫って困っているときに、一緒に模型をつくったりするのが当たり前でした。今思えば、競いあえる大学だったなとも思います。「あの子も頑張っているからがんばろう」とか、「講評で勝ちたい」とか。殺伐とはしていないけど、いい刺激を与えあえる仲間がいたと思います。

(安枝研究室在籍時の写真)

 

:いいお話をありがとうございました。最後に、学生さんたちにエールをお願いします。

原さん:そうですね…。後先考えずにやってみることも、たまにはいいのではと思います。

大変そうだなと思っても、少しでも興味があるのであれば、とりあえず怖がらずやってみると、それまで自分が知らなかった自分の得意・不得意も見えてきたりして、いろいろ発見できると思います。

 

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