2022.03.31 更新

政治・行政をもっと身近なスケールで。~人文地理学の探究と地域おこし協力隊の経験より(大学院生:花谷和志)

社会をつくる

はじめに

こんにちは、花谷 和志(はなたに かずし)です。今回は私のこれまでの人生と研究のお話しを少しご紹介したいと思います。

私は2022年3月まで環境人間学研究科博士前期課程に所属し、無事修士論文の執筆と発表を終えました。同時に学業と並行して行った地域おこし協力隊としての活動では、普通の学生生活だけでは成しえない貴重な経験を積むことができました。これまでの25年間の人生を論文のように「章立て」するならば、まさに人生の「第1章」であったともいえます。以下では自身の研究分野である地理学の話しを交えつつ、「研究活動」と「協力隊活動」を並行して行った学生だからこそ得られた経験をお伝えできればと思います。

地理への関心から地理学の世界へ

私が「地理」に興味をもちはじめたのは、幼少期のとき。「絵で見る世界大地図」(デルフ1998)という本との出会いがきっかけでした。30点以上のイラスト地図から世界の国々の地図と地誌が視覚的に詰め込まれたその本を読み、「わたしたちの住む地球は、どんな姿をしているのだろう?世界にはどんな山、川、湖があるのだろう?そして、いま人々はどんな生活をしているのだろう?」と、次々と好奇心が湧いてきました。未知なる世界に想像をふくらませるとともに、身近な地域のことをもっと知りたいと思うようになり、地元の大阪や神戸のまちを歩いて小さな変化を発見することが「日課」のようになっていきました。

小学校・中学校・高校でも、一番好きな科目はもちろん地理。そして高校3年のとき、大学では学問としての「地理学」を学びたいと強く思い、兵庫県立大学環境人間学部へ入学することとなりました。

本格的に地理学を学ぶことになったのは、人文地理学研究室所属となった学部3年からでした。場所や地域を重視する人文地理学の理論を学び、自身の研究基盤を構築することができました。学部卒業論文のタイトルは「リスケーリング論の人文地理学的再検討-領域、境界、場所-」でした。兵庫県淡路市を事例に、市町村合併によって引き起こされた市域と地域、住民の変化を「リスケーリング」という概念から研究しました。

大学院への進学と丹波篠山市地域おこし協力隊の経験

「卒業論文で探究したリスケーリングの概念を、より深く探究したい」。そう思った私は、同大学大学院環境人間学研究科へ進学しました。同時に、地域を「研究調査する側」としてだけでなく、現場で「問題解決する側」からも学ぶため、2019年4月から2021年3月までの2年間は普段の学業と並行し、兵庫県丹波篠山市で地域おこし協力隊としても活動しました。特に、自身が問題関心として抱いてきた「平成の大合併」を経験した地域を、理論のみならず現場のより実践的な観点からも探究したいと決心したからです。

そして協力隊としていざ“地域の中”に入ってみると、これまで学術的に正しいと思い込んできた理論や概念の面からだけでは理解しきることのできない、地域の実情とそのなかで奮闘される住民の方々の姿を目の当たりにしました。同時に感じたのは、自身の研究がこれからの社会や地域にどのように貢献しうるのか。理論的な研究が、本当にこの世の中で求められているのか。毎日が自問自答の繰り返しでした。

調査報告のプレゼンテーションの様子

協力隊活動から得た教訓

協力隊活動を続けていくなかから得られた経験は研究面のみならず、自身の人生にとっても非常に大きな財産となりました。丹波篠山で地域の方々とともにとことん悩み、考え、苦楽を日々共有することで、「キレイごと」でない現実と課題を一つずつ乗り越えていくプロセスの重要性を実感しました。

特に2年目は、高齢化の進む地域で若い世代の方々にも参加してもらえるような地域づくりを目指し奔走するなかで、地域だけでなく自分自身の柔軟な変化も感じることができました。地域の理想の姿をリスケーリングといった理論や図式にあてはめるのではなく、地域の方々とともに地域の側から柔軟にスケールの再編を模索していく重要性を学びました。学内では決して経験できない人生の教訓を得ることができた、丹波篠山市での地域おこし協力隊の2年でした。

 

地域おこし協力隊期間中の様子(プロカメラマンに撮影していただきました)

大学院修士研究から実務の社会へ

学部4年から修士1年にかけて取り組んだ協力隊としての活動を終え、修士2年で大学院に戻り研究と修士論文の執筆に邁進しました。修士論文のタイトルは「政治地理学における新たなリスケーリングの展開-市町村合併と「身近なスケールの政治」論-」と題し、従来の国家スケール主体の政治(Politics)とは異なる、地域の身近なスケールの政治(politics)の重要性と可能性を論じました。学部時代に論じたリスケーリング論とは異なる、自らの経験に裏打ちされた新たなリスケーリングの提起です。この新たなリスケーリングは、これからの生涯をかけて引き続き探究していくことになりそうです。

しかしながら、私の人生はまだ「第1章」を終えたに過ぎません。環境人間学研究科博士前期課程を2022年3月に修了し、4月からは地元の大阪府にある枚方市で公務員としての新たな「第2章」がはじまります。枚方市ではこれまで培ってきた知見を活かし、理論と現場の架橋を目指していきたいです。そして枚方のまちと地域、住民のために尽力する決意です。

 

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