2021.09.22 更新

危機管理の観点だけでなく、日頃から考えるクセをつけ、常に自分で判断できるように。

社会をつくる

環境人間学部で学んだ先輩たちは今、大学での学びや経験をどのように活かしているのか。そして、「これからの時代の暮らし」についてどのように考えているのか。今回は、神戸市危機管理室で働く田村 遼さんにオンライン取材をさせていただきました。聞き手:二階堂 薫

神戸市危機管理室 危機対応担当 田村 遼さん

大阪府豊中市出身、神戸市在住。2012年、兵庫県立大学 環境人間学部へ入学。大学在学中は木村玲欧ゼミで防災に関する研究に取り組み、2016年に卒業。同年、神戸市役所に入庁し、現在は危機管理室で活躍中。

ずっと、防災に興味があった。

二階堂:本日はよろしくお願いいたします!自己紹介をお願いします。

田村さん: 2012年度に環境人間学部に入学しました。所属は木村玲欧ゼミで、研究テーマは「津波避難を住民が効果的に行えるような津波ハザードマップの提案」。ずっと防災に興味があったんです。

現在の職場は神戸市の危機管理室。部署としては2つめで、以前は中央区役所まちづくり課で3年、勤務していました。

二階堂:危機管理室というのは?

田村さん:地震や台風をはじめ、神戸市で突発的な事案や事故が起こった時に対応する部署です。

危機管理室は、総務ライン、計画ライン、危機対応ライン、交通安全ライン、防犯ラインという5つのラインに分かれています。僕が所属しているのは危機対応ライン。主に、防災に関する実習を計画するのが仕事です。市町村は総合訓練を実施しなければならないと法律で決まっているため、神戸市の防災訓練の計画や実施を担っています。

二階堂:防災に携わりたくて危機管理室を希望されたのですか。

田村さん:いいえ。防災に関する仕事がしたくて公務員になり、公務員2年目までは「危機管理室も、いいですよね」と話していました。が、公務員は担当業務がどんなに好きでも嫌いでも、約3年で異動になるんです。だったら、色んな仕事を経験したい。そう思って、幅広い情報を知ることができる総務部門の業務を希望するようになりました。なのに、異動の内示が出たと思ったら危機管理室で。望みどおりにはいかないのが人事なんですよね(笑)。

緊急時の判断には、平時の考え方が物を言う。

二階堂:特に力を入れている業務があれば教えてください。

田村さん:まだ詳細をお話しすることはできませんが、10月に行われる兵庫県との合同訓練や、12月にある防災訓練の準備などです。自然災害だけでなく、「今、テロが起こったら?」という国民保護事案に備える訓練も業務のひとつ。

神戸市には、通常業務と危機管理室の業務を兼務する「危機管理室兼務・併任職員」という職員がいます。普段はあちこちの部局で課長職を務めていますが、災害発生時には各部局の防災担当になる方々です。8月に大学時代のゼミの先生である木村先生と、その方々を対象とした研修を実施しました。

二階堂:研修を設計する際、意識していることは?

田村さん:何の目的でこの研修をするのか、何を学んでもらうのかを考えます。研修の対象は僕より年齢が2まわりぐらい上の課長職のみなさん。課長級にとっての大きな仕事は、組織として「今、何のために、どうするべきか」の判断を的確に行うこと。災害発生時においては判断が速いほど、迅速な対応につながります。その結果、命や体、財産が守られる。

だから、どんな状況でも冷静に必要な情報を見極め、考えなくてはならない。研修ではどういう理由でそう判断するのかを話し合い、判断力を養ってもらっています。いざという時に突然できるものではないから、平時からの考え方が非常に重要なんです。

危機管理室における訓練の様子。様々な状況を想定し、必要な情報や発信手段などについて議論を重ねる。

働くなら、日本の「防災」を変えた現場で。

二階堂:公務員になろう!と思ったきっかけは?

田村さん:防災に関する仕事をしてみたかったんです。中でも、1995年の阪神・淡路大震災を真っ向から経験し、今でも大きな影響力や発信力を持っている神戶市や兵庫県で働いてみたかった。

8年ほど前に、淡路島で震度5強の地震があったのを覚えてますか?僕が20歳になる年でした。その時、親がニュースを見ながら「どうしよ、どうしよ」と慌てふためいていたんです。その様子を見て、ふだんから対策を考えておかなあかんなと考えるようになった気がします。

考える習慣を身につける、高校生の授業を創造。

二階堂:学生時代には、研究の他にも防災に関する活動を?

田村さん:はい。大学の友人に、向江竜生君という人がいます。したいことが似通っていたので、「一緒に何かやらへん?」ということになりました。

木村先生に相談したところ、防災について人に教えるための教育プログラムの作り方を教えていただきながら、高大連携プロジェクトに参加させてもらうことに。木村先生は、多彩なスタイルで防災に関する講演や防災教育に取り組んでおられるんです。

二階堂:高大連携プロジェクトというのは?

田村さん:高校生を対象に、大学ではどんなことを学べるのかを体験してもらうプログラムです。具体的には、木村先生が関わっておられた兵庫県内の県立高校とのプロジェクトで、僕と向江君とで学習プログラムを考えて授業をしてみたら?ということになりました。

そこで僕たちは、防災について人に教えるための教育プログラムの作り方を木村先生に教わりながら、防災に関する課題を見つけて対策を考えるというプログラムを考案しました。今、ここで地震が発生したらどうなる?と問いかけ、思いつく課題とどんな対策をすればいいと思うかを書いてもらうものでした。

二階堂:その授業で、目指したことは?

田村さん:例えば、今ここで大きな地震が発生したらどうなるか。窓ガラスは割れ、机もイスも飛び散って、形あるもののほとんどが崩壊することでしょう。無数の課題が同時多発的に発生し続ける現場でどんな対応をすればいいのか、1つの課題に1つの対応策を考えるだけでなく、その他のいくつもの課題の対応策として活用できないかというようなことを考えてもらえるように設計しました。対応策を事前に考えておいたからといって100%対応できるとは限りませんが、日常的に考える習慣が身についていたら、いつどんな災害が起こっても乗り越えられるんじゃないかと考えたんです。

確か、授業は1コマ、60分くらいだったと思います。高校生は、10名くらい。授業は合計4回くらいあって、そのうちの1回を担当させていただきました。

二階堂:終了後、どんな感想を抱きましたか。

田村さん:やりたかったことが形になったので、まずは「できた!」という実感が大きかったです。そして、僕たちが意図したことは達成できただろうか、この授業を通して学んでほしかったことは十分伝わっただろうかという自分たちへの問いが残りました。

県立高校での授業の1コマ。初めて自分たちが考えた授業を実施。

「絶対に」起こるなら、対策を考えないと。

二階堂:その後、「津波避難を住民が効果的に行えるような津波ハザードマップの提案」という卒業研究に取り組まれました。防災には台風や地震など色んな領域がある中で、このテーマを選んだのは、なぜでしょう?

田村さん:ある時、「南海トラフ地震発生時、10m以上の津波に襲われる可能性のある自治体がわかりました」という内容の記事を見たんです。南海トラフ地震はいつ起きてもおかしくないと言われている上、津波は非常に重要な話題でした東日本大震災が発生したこともあり、南海トラフ地震が「絶対に」起こるなら、その対策や対応はとても大事だなと考えたんです。

ちょうど、震災から何年かたって被災した方々の声を聞けるようになった頃で、インタビュー記事やアンケート結果のような情報が続々と世に出たタイミングでした。そんな中、今までの津波のハザードマップは東日本大震災を経験してよりよく改良されたのか、東日本大震災の経験が適切に盛り込まれているのか、というようなことを研究しました。

大学での研究の集大成、卒業研究の口頭発表

地域活動は、記憶に楽しく残るといい。

二階堂:地域における危機管理室のあり方は、どうなっていくのでしょう?

田村さん:地域団体のみなさんとお話しする機会が非常に多くなってから、それぞれの地域で防災訓練を含めた様々な取り組みが行われているのを実感しました。本当にありがたいと感じています。一方で、高齢化が進む中で深刻化している担い手不足という社会現象も間近でひしひしと感じましたね。

あらためて、地域活動って非常に大事だなと。幼い頃って地域のお祭りをすっごく楽しめたし、思い出として残っています。だから危機管理という観点だけでなく、防災訓練や防災イベントを含めた色んな地域活動を、思い返したくなる記憶として残していけたらいいなぁと思っています。

二階堂:公務員という役割も変貌していきますか?

田村さん:公務員としては、これまで以上に民間企業と協力しながら事業を進めていくことが多くなるだろうなと感じています。その上で神戶市の職員として何ができるのか、何をしないといけないか、何が問題なのか、現状を適切に把握しなければと。様々な課題を解決するためにはどうすればいいかを、多様な視点で考えていきたい。僕はこれから、そういうことに注力したいと思っています。

横のつながりは、いつも何でも話せることから。

二階堂:公務員や行政組織は、これからどうなっていきますか?

田村さん:昔ながらの縦割り組織ではなく、様々な部署を横断する取り組みが全国的に重視されていますが、組織を横軸で結ぼうという動きはまだまだ浸透しきれていないのが現状。組織としての在り方よりも、日常的に様々な部署がつながって、日常会話のレベルで横断的に話せるといい。横のつながりで鍵となるのは、平時のコミュニケーションなんですよね。

同じ部署の方たちとは色んな話をしています。コロナ禍においては飲み会のような機会がなくなっているので、日常的なやりとりや雑談として。

二階堂:特別なことではなく、いつでも、なんでも話せることって大切ですよね。

田村さん:担当業務が違っていても、それぞれがどんなことをしているかくらいは常日頃から認識していなければと思います。「この問題、どうしよう」という場面に遭遇しても遠慮せず、色々話せる関係性が築けていたらいいなって思うんですよね。

だから、平時から何でも話せることが重要だなぁと思いますし、今の部署では実現できているなと思います。一緒に考えようやって言い合えるような。

誰のため、何のためなのかを考えてほしい。

二階堂:最後に、在校生や高校生へ、特に伝えたいメッセージをお願いします。

田村さん:何ごとにおいても、誰のために、何のためにやるのかを考えてほしいなと思います。進路としては就職という道もありますし、大学への進学や専門的なことが学べる専門学校に進むという選択肢もあります。誰のために大学へ行くのか、それは親のためか、自分のため。何のために、何を目指して大学へ行くのか。何を目的にその大学を志望しているのかが今後の自分の軸になると思うので、忘れないでほしいなと。もちろん、人生においてやりたいことや何のために行っているのかというのは変わっていきます。だからこそ、いかなる時も真剣に自分自身で考えることが非常に大切だと思います。

二階堂:環境人間学部はどんな人におすすめですか?

田村さん:そうですね…まだ進みたい道を決めきれないなぁという人に、特におすすめです。大学1年の間に色々な授業を受けながら自分の進路について考えることができるので、自分がしたいことや学びたいことは何なのかをゆっくり見つめることができますよ(注:食環境栄養課程は入学時に専門を決定)

それから、もう1点お伝えしたいことがあります。この先、受験や学生生活の中で辛いことや悩みが生まれることも少なからずあると思うのですが、どんな時も自分を守れるのは自分しかいないということ。本当にしんどい時は、思いきって休んでほしい。人生は1人では生きられないのだし、自分にとって大事な人たちを心から大切にして生きていけたらいいんじゃないかなって思います。

二階堂:だれもがそんな風に考えるようになったら、いいですね。あぁ、お時間です。本日は、ありがとうございました!

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