2020.02.17 更新

環境人間キャンパス内の植生からの酵母菌の分離培養

兵庫県立大学環境人間学部食環境栄養課程

准教授 有満秀幸

微生物研究室の紹介と今回の取り組みの目的

環境人間学部には食のエキスパートである管理栄養士を養成する食環境栄養課程があり、私はその中で微生物学をベースに、食の安全(食中毒予防)と有効利用などについて研究しています。

微生物にはヒトや動物に感染症(食中毒含む)を引き起こすものもいますが、納豆を作る納豆菌、ヨーグルトでは乳酸菌やビフィズス菌、アルコールや味噌、醤油、パンではこうじカビや酵母菌というように食品製造に欠かせない有益なものも存在しています。このような微生物は自然界にも存在していて、国内で多くの研究機関などが採取して食品製造に活かそうと試みています。

本学部のある姫路環境人間キャンパスは自然が豊かで、いろんな植生があることより、有効利用性を秘めた微生物資源が存在している可能性があります。そこで、2019年度、当研究室では本キャンパスの構内から、食分野に利用できそうな有用な酵母菌(微生物の一つ)を見つけようという目的を掲げ、実験を行いました。参加するのは当研究室に所属する、まだ研究に殆ど触れていない3年生。彼女達が翌年、卒業研究を進めていくための基本的な考え方や手技を身につけることも目的に実施しました。

本取り組み内容

学生たちは事前に様々な準備を重ね、実験に臨みました。どのような植物を選ぶか、無数の微生物集団の中から酵母菌だけを狙って分離するためにどのような培地の工夫が必要か、また得られた酵母菌がどういう種類のものなのかを調べるために必要な方法を検討し、講義や実習の開始前や終了時間後に研究室に来て実験を行いました。とはいえ、学生にとっては殆どが初めて行うことですので、私も一緒に参加しながら、研究室の機器を使った実験手技の習得を中心に助言・指導を行いました。

 材料植物の採取

半年ほどの実験期間で、構内のサルスベリ、クリ、イチョウ、アベリア、カエデ、ザクロ、アジサイ等の花、果実、葉などを採取して培養し、数種の酵母を分離することができました。残念ながら、今回同定した結果では、まだ食分野に直接役立ちそうなものを得るには至りませんでしたが、実験プロセスと成果を本学部主催の研究発表会である環境人間学フォーラムでポスター発表しました。ポスター発表も学生にとっては初めてでしたが、ポスターのレイアウトや表現など学生主体で取り組みました。

 酵母菌の分離培養の様子

 得られた酵母菌の一部(顕微鏡写真)

 環境人間学フォーラムでの発表

本取り組みの意義や今後の展望

今回の期間では有用な酵母菌を得ることはできませんでしたが、目的達成のための事前の計画の立て方や進め方、また思い通りの結果を得ることの難しさとその解決に向けて次にどう進めていくかの一連の思考や考察(リサーチマインド)、さらには発表を通じて人にわかりやすく伝えるという研究の基本の一端を、短期間でも経験して学んでもらえたことは、学生にとっては意義があったのではと考えています。

また、本学部は地域資源の利用や地域の課題解決を目的とした研究にも積極的に取り組んでいますので、卒業研究に対しても、研究成果が“どのように地域や社会の役に立つか”という意識を持って取り組んでもらうことを期待したいです。

今回の取り組みは、今後も関心を持って取り組んでくれる後輩達に引き継いで、学外にもフィールドを広げていきたいと考えています。

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