2020.02.16 更新

都市×離島=地域の暮らしを相対的に見る力!

兵庫県立大学環境人間学部社会デザイン系

准教授 太田尚孝

都市計画という専門分野を知っていますか?

環境人間学部社会デザイン系の太田尚孝です。

私の専門分野は「都市計画」といいます。都市計画は、普段の生活ではあまり注目されるものではありませんが、皆さんの当たり前の暮らしを下支えする非常に重要な分野です。都市計画と聞くと、何もないところに駅をつくり、道路や橋を架け、都市社会に必要な公共施設(例えば、学校や市役所、公園など)、あるいは住宅地を適正に配置するという、どちらかというと進歩的で物的環境の整備というイメージをもたれるかもしれません。

しかし、これはゲームの世界ではありえますが、今の日本では非現実的です。皆さんも知ってのように日本では、既に人口減少時代に入り、地球環境問題の観点からも、ゼロから都市をつくるというのは現実的には難しくなっています。むしろ、今ある都市をいかにして時代環境に合わせ、次の世代にバトンタッチをするかが問われています。すなわち、人口増加を前提としていた時代とは全く違う新たな発想や手法が必要となります。このような時代認識を前提に、私は「誰もが幸せで豊かに暮らせ、安全・安心で持続可能な都市環境づくり」につながる都市のあり方を考え、研究し、そして播磨地域を中心に実践しています。

家島活性化プロジェクトの紹介

さて、ここからは、私が研究室(都市計画研究室)の学生と共に行っている、都市計画を行う都市とは真逆な「離島」でのプロジェクトについて紹介をしたいと思います。

都市計画研究室では、3年生は全員、研究室プロジェクトと呼ばれる調査・実践活動を地域連携型・学生主体で行っています。その対象地の一つが、環境人間学部と同じ姫路市にある家島です。家島は、姫路港から船で30分の距離にあり、「すぐ行ける離島」として近年、観光の面からも注目されています。もっとも、家島は日本の離島の中でも交通アクセスは大変良い状況といえますが、若い人が島を離れることによる人口減少が顕著となっています。さらに全国的な問題となっている居住者の高齢化も進んでいます。そのため、島には空き家や空き地が目立ち、施設の統廃合が行われ、地域コミュニティの維持も危うくなっています。

 

このような状況の中で、私は「いえしまコンシェルジェ」として家島にて島づくりに日々奔走している中西和也さんと2015年に出会いました。その後、2018年度から中西さんと一緒に、いわば「日本の未来の縮図」ともいえる家島の活性化につながる活動を研究室の学生と共にスタートさせました。具体的には、2018年度には今や地域創生のキーワードともいえる「関係人口」に関する調査を行い、そこから発想して学生のための家島ツアーを企画しました。2019年度では、家島の認知度や商業環境の調査をした上で、課題解決の一助として姫路市内にて「カフェいえしま」を学生と島の方々とのコラボ企画として実施しました。今後は、家島での空き家の利活用策の提案や実践などに取り組む予定です。いずれも、学生や大学側の自己満足に陥ることがないように、島の方々のニーズをよく理解し、現地を訪れ、自分たちのできることは何かを考えるようにしています。

カフェいえしま(2019年12月7-8日:終了しました)のチラシ

都市計画と離島の活性化プロジェクトとどのような関係が??

もちろん、都市と離島では、生活環境としても前提条件が大きく異なります。そのため、都市計画研究室を希望してきた都市的生活が大好きな学生は当然戸惑います。活性化につながるプロジェクトを島の方々と学生主体で行うとしても、自分たちがこれまで当たり前に生活してきた場所とは様々な面で「違和感」を得ます。例えば、整然とした計画的につくられた都市の街並みが全て正しく、あらゆる空間が将来的にはそうなるべきと思っていると、島の街並みは混乱しており、前時代的で失敗例となります。

しかし、よくよく観察してみると、その空間は人々が生活の知恵の中で創意工夫した結果であり、現代社会で人間がより豊かに暮らすためのヒントがいくつも隠されていることがわかります。つまり、少し難しい言葉でいうと「地域の暮らしを相対的にみる力」がプロジェクトのキーコンセプトになります。

私が何を言いたいかというと、より良い都市を創造するためには、自分自身の価値観や経験を何とも比較せず、絶対的に正しいと思うことは、都市計画が持つ社会的影響の大きさから考えても私は好ましくないと考えています。ですから、私としては、たとえ研究室の学生が未来の都市を考え、これからも都市の中で暮らしていくとしても、早い段階でそれとは全く違う空間を訪れ、直面する課題を肌で感じ、微力でも島の活性化に資するプロジェクトを島の方との協働型で実践していくことは、自分たちのこれまでの暮らしを再考するきっかけとなり、かけがえのない経験になると信じています。もちろん、何もしなければさらに衰退し、最終的には消滅しかねない地域を少しでもより良くしていくことは大きな社会的意義を有していると思っています。

「地域の暮らしを相対的にみる力」を習得すると…

このような「地域の暮らしを相対的にみる力」、言い換えれば「物事を多面的にとらえ絶対視しない姿勢」は、卒業研究に代表される学術研究の出発点にもなります。さらに、学生にとっては就職活動での進路選択や将来の生活スタイル、日常生活でも皆さんが消費者や有権者としてより良い選択をすることにもつながるのではないでしょうか。例えば、「都市で働き、暮らすこととは、どのような特徴があるのか」、「現状、都市社会では本当に誰もが理想的で望ましい環境に置かれているのか」を考えるためには、一度、自分のいる場所を物理的にも心理的にも離れてみて、俯瞰的にあるいは比較的視点に自分の生活環境をみる必要があると思っています。

環境人間学部では、近代化や利便性という名で暮らしの最適化だけをひたすら追求するのではなく、本来あるべき人間生活を学際的に探究することを大切にしており、家島活性化プロジェクトはこの方向性とも合致しているのではないかと私は考えています。

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