かんなび 学びいろいろ、環境人間学部のみちしるべ。

2023.03.09

私はまだ何者でもない。だからこそ夢を追う。(永井成美研究室・博士前期課程1年)

大学院に進学したのは「答えのない問い」について考えるのが好きだったから。

私は,人と議論をするのが好きでした。白黒はっきりつける議論はもちろん,「そんな考え方もあるのか」と,グレーをグレーのまま深めていく視野や考え方が広がっていく感覚が好きでした。

大学進学後すぐに,大学の先生たちが研究内容を紹介してくださる講義がありました。ご自身の研究のことを話す先生方は,とても生き生きとし,研究が本当に楽しくて仕方なさそうに感じました。そんな,まだ明らかになっていないことを楽しそうに追求する,そんな先生方に憧れ,いつしか私も研究職を志すようになり,大学院への進学を決めました。

栄養学にもいろいろ分野があるのですが,私は,「若い女性のやせ」が研究テーマの一つである研究室に所属しました。それは,私自身が研究対象である若い女性のうちの一人であり、体型に関する悩みや、自分の価値についての悩みなどを身近に感じていることと,モデルの仕事(後述)をする中で,体型に関心があったからです。やせていることが美しいと認識されがちな現代において、非常に痩せているモデルが好まれ、仕事につながることが現状としてあります。モデルでなくても,やせなければという強迫観念に苦しむ友人を見ることは少なくありません。現在、若い女性の摂取エネルギー量は経年的に減少しています。減量のための無理な食事制限から解放し、「やせていることに価値がある」や、「やせなければならない」といった間違った認識やプレッシャーから、若い女性の心身の健康を守りたい,そのために,管理栄養士という専門性を活かし、食べることのメリットを伝え、健康的に食べてみようと思えるようなデータを示したいと考えました。

健康的な食事は人の心にどう影響するか

私の研究は,若い女性の心に響き、自ら食べてみたいと思える健康的な食事と間食を、データから提案していくことを目的としています。日本人若年女性が食事を「健康的」あるいは「不健康」と認識する要素の調査と、健康度の認識が異なる食事が自尊心や身体への肯定感情,体型認識に及ぼす影響の摂食試験データを丁寧に拾って再解析し,データの意味づけや先行研究との位置づけを明確にしながら論文化しました。

摂食試験で用いられた試験食は,エネルギーと重量を同じに調製した健康的な食事(主食・主菜・副菜・汁物を含む和食)と不健康な食事(ドーナツと甘い飲料)です。これらをランダムな順序で,異なる2日間に試験食を負荷し,自尊心,身体への肯定感情,現在の体型認識と理想の体型,食欲感覚などを,食前から摂食2時間後まで測定し,その結果、日本人若年女性において,健康的と認識される食事の摂食後には,自尊心や身体への肯定感情が一過性に高まることを示唆する結果が得られました。つまり,健康的な食事は,身体が健康になるだけでなく,心理的にも良い効果があるということがデータとして示せたのです。

今後の展望としては,前回の「食事編」に続き、「間食」に関する研究を続けて行っていきます。この研究では、さまざまな食品群・具体例として示された「間食」に対して若年女性が有する健康・不健康のイメージをWeb上での質問紙により調査すると共に、実際の間食摂取行動との一致・不一致、イメージのもととなる心理的要因について明らかにするための検討を行い、若年女性の食事改善に役立つ知見の公表を目指します。

兵庫県立大学「知の交流シンポジウム」でのポスター発表

ポスターセッションで最優秀賞を受賞

私は研究の中で,粘り強く努力し続けた結果,業績として結果を残すことが出来ました。研究活動の成果として,学会発表を2回,学術誌へ論文を投稿中,そして,兵庫県立大学の「知の交流シンポジウム」というポスターセッションで最優秀賞を受賞することが出来ました。

この知の交流シンポジウムでは,大学院生や若手研究者などから,137件のポスターが応募がありました。このうち優秀賞が4件,最優秀賞は1件のみ選ばれるのですが,私は,その最優秀賞として選んでいただけました。

研究は地道なことの積み重ねであり,行ったことがすぐに結果として得られるわけではありません。仮説通りの結果が出ないことや,思うように進められないこともあります。そこで諦めるのではなく,改善策を考えたり論文を読み新しい知見を取り入れたりと,その時にできる努力を欠かさず,粘り強く継続してきました。

このように,粘り強く努力し続けた結果,先に述べました業績と,最優秀賞の受賞という形で結果を出すことが出来ました。

シンポジウムでの表彰式

研究と並行してモデル業にも挑戦

今の研究テーマを始めたきっかけのひとつが,モデルとしての経験です。私が学部生のとき,友人から声をかけてもらってモデルをしたことがきっかけで,自分が芸能でどこまで通用するか試してみたいと思い,大学4年生の時,事務所に所属し本格的にモデル活動を始めました。

事務所に所属できた時は,これからモデルとしてたくさんお仕事をしていけると思っていたのですが,想像とは違い,事務所のレッスンを受け始めてから5か月ほどはオーディションに落ち続け,仕事が全く取れませんでした。ここで諦めてしまう人も多いのですが,研究生活でも培った粘り強さが活きました。お仕事が貰えている先輩モデルや先生と比較して,ポージングが不自然でぎこちないことや,動きの硬いウォーキングが課題であると分析し,解決のために,ファッション雑誌を購入しスクラップしてまとめ,それを手本にポーズを練習したり,日常から歩く姿勢を意識したり,暇さえあればストレッチを行うことを継続しました。さらにレッスンを受けた後には,指摘をいただいた改善点を動画内に書き込んで保存し,次のレッスンまでに改善できるように復習を行ってきました。

こうした努力の結果,徐々にオーディションに受かるようになり,5か月目以降では多いときで月に3.4件ほどお仕事をいただけ,芸能活動でも収入を得ることが出来るようになりました。これらは単価が高いため,シフト制のアルバイトに従事するよりも,研究活動に時間を割けるようになっていると思います。

モデルとしても活動中

事業開発や人材を通して管理栄養士の地位向上に貢献したい。

事業開発や人材を扱う会社に内定を頂いております。大学院進学当初は,管理栄養士職か,研究職につくだろうと考えていたので,私自身もびっくりです。

なぜ私が,この会社を志望したのか。大学院に進学し卒業が2年遅れていることもあり,自分のキャリアを考えるうえで,「20代でどこまでいけるか」「産休に入る前にいかにレベルを挙げられるか」が重要でした。内定先はベンチャー企業であり,若いうちから責任を持って活躍でき,それがきちんと評価され,待遇や仕事内容に反映される環境でした。一般的な管理栄養士職の場合、年功序列で下積みが数年あるとされています。さらに,受験資格を得るのすら大変な国家資格であるにもかかわらず,給与面や待遇に反映されていないという現実を,就職活動をするなかで目の当たりにしました。

私は,管理栄養士はこれまで以上にニーズが高まる可能性を秘めている資格であると考えています。まず消費者の食に関する関心が相変わらず高いこと、スポーツや医療分野でも管理栄養士が重要なポジションで活躍していることなどが挙げられます。そのため,管理栄養士が社会に貢献できる,健康づくりに関わるような新しい事業の開発や,スポーツ栄養の指導に入ってほしい個人・団体と,管理栄養士をマッチングし,栄養指導の効果として成功モデルを増やすことが出来れば,管理栄養士の需要が増し,地位向上につなげられるのではないかと考えました。管理栄養士として働きながらこれらの課題を解決することは難しいと感じ,事業開発・人材を扱う内定先で,これらの目標に向けて頑張りたいと思いました。

以上に述べた通り,私は管理栄養士の地位向上をはじめ,ゆくゆくは女性が占める割合の高い職種の地位向上に貢献すべく,今後も邁進していきたいと考えています。

 

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